口腔外科総合研究所 l 口腔外科 大阪

スプリント使用後の顔の変貌について悩んでいます

年齢 性別 相談日
10代 女性K 2013年11月21日

【相談者】2013年11月21日  女性K

質問

スプリント使用後の顔の変貌について悩んでいます。私は2年前顎関節症になり口が開かず、歯科医院に通いスプリント治療を行っていました。スプリントで食いしばりの予防・顎の位置を高くすること・顎を前に出すことができるとの事でしたがスプリントをはめるようになっても症状の改善は見られずかみ合わせが悪くなりました。

今は上下の前歯2本のみが当たりその他の歯は当たっていないという状態です。話したり歌ったりするとカチカチと前歯が当たってしまいます。また治療前は普通だった顎がどんどん出てきてしゃくれ長くなったことや、口元がモコっと出てしまったこと、笑うと下唇が上の歯を全て覆うくらいになってしまい歯茎しか見えなくなったことに悩んでいます。

歯科医院には定期的に通っており上記の症状を訴えるのですが、毎回「よくなっている」と言われるだけなので疑問を持っています。顔の変貌が気になるので今はスプリントをはめていません。

前に突出してしまった顎と下の歯、こんもりしてしまった口元、かみ合わせは元に戻すことができるのでしょうか。もしできない場合は、将来顎と口元の整形を行いたいのですが問題はないでしょうか。

【回答】口腔外科総合研究所 樋口均也

顎関節症で口が開かなくなり、問題が続いているようですね。顎関節の内部には関節円板という軟組織があり、顎の動きをスムーズにする役割を担っていますが、前方に大きくずれると下顎の動きを妨害し、口を大きく開けることができなくなります。

今回は、上記のような関節円板の前方転位による開口障害、即ちクローズドロックが生じたのでしょう。クローズドロックの直後にうまくロックが解除できればよいのですが、ロックした状態が一定期間続くと解除できなくなります。ロックが解除できた場合にはスプリントの使用によりロック再発を予防できる一方、ロックが続いている状態ではスプリントを使用しても症状の改善は期待できません。

ロックが持続する場合には、開口訓練を持続的に行います。すると前方転位した関節円板がさらに前に移動し、結果として下顎の動きを邪魔することがなくなって元のように口が開くようになるのです。

スプリントの使用によって下顎が前に移動し、前歯しか噛み合わなくなったようですね。スプリントには幾つかの種類がありますが、下顎を前方に位置付ける「前方整位型スプリント」を使用されたのでしょう。前方整位置型スプリントは開閉口時に「カクッ」と音がするクリッキングという現象を生じないようにする効果があります。ただし、クローズドロックを解除する効果はありません。

前方整位型スプリントを長時間使用し続けると噛み合わせが変化し、きちんと噛めなくなる場合があり、下顎が前方に移動することによって開口量が減少します。下顎を後方の本来の位置に戻すことは困難ですが、3級ゴムを用いた矯正治療で治癒した例が幾つか報告されています。顎や口元の整形に際しても、下顎が本来の位置に戻っていることが望ましいといえるでしょう。