口腔外科総合研究所 l 口腔外科 大阪

粘液のう胞手駆出後の内出血斑と知覚麻痺

年齢 性別 相談日
40代 女性 2015年4月16日

【相談者】2015年4月16日  T

質問1

樋口 先生、はじめまして。2015年4月10日に右側下唇の下部分に出来た粘液嚢胞の除去手術を受けました。事前の説明で、部位が普通よりもかなり下の方で神経に近いため、術後に麻痺や痺れが残るかもしれないとのことでした。

摘出した組織を見せていただきましたが、1-2cmくらいはあり、担当しくださった先生によると幾つかの唾液腺を巻き込んでいる状態だったとの事でした。(部位が下だったこともあり、嚢胞が出来たことになかなか気付かず、出来てから恐らく5ヶ月くらいは経過していたと思います。そのためサイズ的にも大きくなってしまっていたようです。)また、細かな神経を切断したが、それは私のケースに限ったことではなく、他の患者でもやっていることであり、嚢胞摘出には避けられないことだったとも。

術後1週間経過した今現在でも除去した部位の上にあたる下唇の部分(下唇の1/4くらい)と、その下あたりが完全に麻痺・鈍麻状態です。見た目もぶよぶよした感じです。未だ麻酔がきれていないような感覚で、指で触れても・氷があたっても・熱湯があたっても、何も感じません。恐らく針で刺しても何も感じないと思います。この部位だけがずっと麻酔がきれないまま残っているという感じです。

術後の翌日にこの部分が内出血で真っ黒になり、その3,4日後からは唇の下部分にも内出血が出ました。手術翌日の消毒の際、先生は内出血は1週間くらいで消えるとの事だったのですが、今も下唇1/4とその下部分が内出血状態です。

術前の説明の際、先生は自らの唇と顎の間の部位を指差しながらおっしゃっていた為、感覚異常が残るのはその辺りなのだと解釈していました。なので、自分では予想していなかった唇が未だに鈍麻していること、そして1週間で消えると説明された内出血が依然残っていることにものすごく不安を感じています。

消毒の際に麻痺状態を伝えたところ、ビタミンB12を処方され服用しています。感覚の戻り方としては、術後3-6ヶ月くらいですすみ、その後はものすごくゆっくりになるとの事でしたが、「1週間程度で内出血が消えるだろう」が外れていたこともあって、3-6ヶ月で本当に回復するのかどうか不安でたまりません。

もう、ある程度の感覚の異常が残るのはしょうがないと諦めています。ただ、この状態が100%続くのは辛すぎます。唇はぶよぶよした感じで、動かすと嫌な感じがあるのに、触ってもそれを知覚出来ない…

感覚の鈍麻や内出血、ぶよぶよした外見はいずれ治るのでしょうか?鈍麻は今の状態が100とするならどの程度まで軽減される可能性があるのでしょうか?どうかご教示宜しくお願いいたします。

【回答】口腔外科総合研究所 樋口均也

粘液のう胞は、唾液腺が何らかの理由のため傷ついて唾液が周囲に漏れ出して溜まると発症し、手術でのう胞と傷ついた唾液腺を摘出する必要があります。

手術を行うと腫れと麻痺が必ず出ますが、腫れに伴って内出血斑が生じる場合もあります。ただしそれらは一過性であり、1~2週間で消失します。お話から、腫れはその程度の期間で消失し、内出血斑が長く残ってしまったのでしょう。

内出血皮下が起こると血液が溜まり、その血液が徐々に壊れてなくなっていきますが、血液中の赤い色素成分であるヘモグロビンがヘモジテリンやヘマトイジンに変化し、紫色や黄色に変わります。これが内出血斑です。

内出血斑は手術後1週間経過した頃が最も目立ち、2週間程度で消失しますが、何らかの理由から手術した部分の血行が悪いと長く残るケースがあります。

血行が悪いということは微少な循環障害があることを意味するので、対応策は血行をよくすることです。まず入浴時もしくは入浴後、下唇の辺りをよくマッサージしてください。毎日続けていくと効果が現れるはずです。

微少循環障害の改善には漢方薬やはり治療、お灸、ホットパック、近赤外線照射、レーザー照射、ストレッチ、食事療法、ハーブティー、カプサイシンクリームなど、マッサージ以外にもさまざまな治療法があります。

摘出手術によってその部分の神経が切断されると下唇の麻痺は必ず起こり、傷ついた神経が再生するには長い時間を要します。3~6ヶ月で回復すると説明を受けたようですが、おそらくその程度の月日は必要でしょう。場合によっては、さらに時間がかかる可能性もあります。

神経麻痺についてはいつか治りますが、回復を早める方策としてビタミン剤やATP製剤の内服、また星状神経節ブロックや先に前述の血行を促進する治療法が有効です。

【相談者】2015年4月20日  T

質問2

樋口 先生、お忙しいところ、詳しく丁寧なご回答ありがとうございます。

> 紫色や黄色に変わります。このような色を帯びるのが内出血斑です。おっしゃるとおりです。内出血で黒っぽくなっている周囲が黄色くなっていて、これについてもなぜなのか分かりませんでした。なので、ご説明いただいてとても安心しました。内出血がなかなか消えないことについても、血行がかなり悪いので、それが影響しているからだと腑におちました。

神経麻痺について、「いつか治る」とのお返事に、ものすごく安心しました。ネットで粘液嚢胞を除去された方の書き込み(ブログ)を見ても、殆どの人があっさり治癒している様子で、1週間以上経過しても相変わらず鈍麻状態なことにものすごく焦って不安になっていましたが、メチコバールを飲みながら気長に回復を待ちたいと思います。下唇部のマッサージも早速取り入れてみます。

起こる現象全てに不安が募ってきてしまいましたが、正常な反応だと分かり、気持ちが落ち着きました。本当にお忙しいところありがとうございました。