口腔外科総合研究所 l 口腔外科 大阪

上顎骨の変形

年齢 性別 相談日
30代 男性 2009年12月3日

【相談者】2009年12月3日 30代 男性 KN

8ヶ月前、寝ている時に顔を強く踏まれました。上前歯を下前歯が強く押し当るのと、鼻閉、鼻にしわがふえました。上顎骨が微妙に陥没したと思います。上顎骨を2mm位前方に押し出しだせれば、鼻骨も追従して鼻閉も無くなると思います。可能でしょうか?CTもとりましたが、骨折等は見受けられないとのことでした。

【回答】口腔外科総合研究所 樋口均也

噛み合わせや鼻の変化が生じた原因としては、やはり骨折による顔面の変形が疑われます。本当に2㎜ぐらいの変化であるかどうかは不明ですが、その程度の変形であればCTで検知することは困難です。 受傷後日が浅ければ、前方に徐々に移動させる「懸引療法」が可能ですが、すでに8ヶ月が経過していると骨は変形したその位置でくっ付いてしまっており、たとえ前方に懸引したとしても、もはや動かすことはできません。

そこで、再度骨折した部分を切り離して正しい位置で固定する「骨切り手術」が根本的な治療法となります。ただし変形の程度が軽度であるため、元の状態に戻せるかどうかは微妙なところです。従って、手術を行うメリットがあるのかについて、状態を確認の上で慎重に判断する必要があります。あるいは手術は行わず、噛み合わせや鼻の治療を行なう方が得策かもしれません。

口腔外科や整形外科、耳鼻咽喉科を受診して詳しく検査した上、今後の方針について相談されることをお勧めします。

【相談者】2009年12月5日 30代 男性 KN

お返事ありがとうございます。大学病院の形成や耳鼻科並びに市民病院口腔外科の診察も受けましたが、変化を認識できないとの診察でした。しかし、私自身、その微妙な陥没に苦しんでおります。イメージとしては、鼻や上顎骨を前方へ牽引してもらえれば治ると考えています。心療内科にも通院しましたが原因が心ではなく明らかに顔の陥没違和感による苦しみのため無理でした。

牽引療法があっていると感じます。それはどのような方法なのでしょうか?通院でできるものでしょうか?(鼻にヘラを入れて引っ張ってもらいたいかんじです)

【回答】口腔外科総合研究所 樋口均也

牽引療法とは、上顎骨や頬骨に金属のスクリューやプレートを取り付けてその先にフックを接続し、ゴムをかけて前方に引っ張るという方法です。一般的には外来通院による治療は可能です。

【相談者】2009年12月7日  30代 男性 KN

お返事ありがとうございます。この治療法は骨折していないと成果が出ないのでしょうか?どこの病院でされていますか?樋口先生のところでもされているのでしょうか?口腔外科、形成外科、耳鼻科でしょうか?よろしくお願いします。

【回答】口腔外科総合研究所 樋口均也

牽引療法とは、本来骨折して変形しているが手術が不可能な場合や手術をするほどの変形ではない場合に、陥没や変位した骨片をワイヤーなどを用いて時間をかけて元の位置に戻す治療法です。実際には骨に穴を開けてスクリューやプレートを骨面に取り付け、そこにフックを接続してワイヤーやゴムで引っ張ります。またワイヤーやゴムを固定するため、顔面や頭部に鳥かご状の金属製装置を装着します。

ただし、牽引療法が可能な時期は骨折した骨片同士がくっ付いていない時期(受傷後2~3ヶ月以内)であり、8ヶ月も経過した現時点では牽引しても変化は起こりません。そのため「骨切り術」を行い、骨折した部分で再度骨を切り離してから牽引しますが、入院して全身麻酔下で行う必要があります。また、骨切り術を行う場合はその場で骨片を元に戻した方がうまくいきそうです。

ただし、このような治療は全て入院できる施設で手術室があり、全身麻酔を行える体制が必要となります。また、牽引療法中は普段通りの生活を継続することは難しく、基本的に一定期間の入院が必要となるでしょう。従って、牽引療法が適応されるケースは全身に種々の外傷があり、ベッドで寝たきりになっている場合がほとんどです。

今回はそもそも骨折による変形がわずかであり、手術や牽引療法を行ったとしても今以上の状態に改善できる可能性は少ないと推測します。また、このような治療には一定のリスクが伴うことから、いずれの医療機関でも積極的な治療は推奨しないと考えられます。

そこで、どうすればよいかというと骨折による変形はそのままにしておき、骨折の影響に対して処置するのが得策でしょう。たとえば、かみ合わせに関しては歯を削って矯正治療を行い、移動させる方法によって改善されると考えられます。また、鼻の症状や顔面の変化に対しては、それぞれ耳鼻咽喉科や形成外科で症状を改善する治療を個別に受けることをお勧めします。