口腔外科総合研究所 l 口腔外科 大阪

下顎骨にできたのう胞らしきもの

年齢 性別 相談日
50代

男性

2019年6月7日

質問

初めまして。下顎骨にできたのう胞らしきものについて質問させていただきます。別の治療の際に見つかり口腔外科を受診。全く健康な歯の基部にのう胞ができている点で珍しい事例だと言われました。

治療方針は、健康な歯の神経を抜いて、その穴から内容物を少しずつ排除してのう胞らしきものの縮小を計り、その後に外科手術で全体を摘出するというものでした。今のサイズのまま切開手術をするのは、下顎神経を傷つける恐れがあるために避けたいという説明でした。

しかし、抜いた神経の穴からのう胞らしきものへのアクセスを計ったのですが、その手前に固い何かがあってのう胞らしきものまでは到達できませんでした。日を改めて再度ドリルで掘り進みましたが、のう胞らしきものまでは到達できず再び中止となりました。

結果、今のサイズのまま全身麻酔下で〝のう胞らしき組織・その上部の固い組織・歯根の一部″を摘出することに。そこで先日、全身麻酔に適応するかの検査を受けたのですが心電図に少し異常があり、心エコー検査を受けることとなりました。神経を傷つけるかもしれない、全身麻酔のリスクもあるなど不安でいっぱいです。何か他に良い治療法は無いものでしょうか?

【回答】口腔外科総合研究所 樋口均也

下顎の内部に円形や楕円形の空洞が生じ、顎骨のう胞が疑わしい状況なのでしょう。よくあるケースが親知らずを巻き込んだ含歯性のう胞ですが、歯を含まない原始性のう胞の可能性があります。他に脈瘤性のう胞、単純性のう胞、角化嚢胞性歯原性腫瘍やエナメル上皮腫という良性腫瘍の可能性も考えられます。

のう胞でも良性腫瘍でも病変を全て摘出することが基本的な治療方針となります。しかし、ある程度の大きさの病変は下顎骨を走行する下歯槽神経に近接しているため、摘出時にどうしても神経を傷つけてしまって術後に麻痺が残る可能性があります。

神経の損傷を回避するために開窓術をお勧めします。これは下歯槽神経に近接した病変はそのままにして、上部の病変のみを摘出しておく方法です。術後は切開部を縫合せず空洞が露出した状態にし、内部にガーゼを詰めて定期的に交換します。数週間~数か月で空洞が小さくなり、病変が下歯槽神経から離れた後、残っている病変を摘出します。

また、摘出術は全身麻酔が必要なので心電図の異常が問題となりますが、開窓術は局所麻酔でも可能で手術時間も短縮できます。全身麻酔と局所麻酔のいずれが体への負担が少ないかは状況によって異なりますが、手術時間が短い方が有利であることは間違いないでしょう。