口腔外科総合研究所 l 口腔外科 大阪

放射線治療後の歯の治療

年齢 性別 相談日
40代 男性 2011年2月5日

【相談者】2011年2月5日  40代 男性 H

質問

宜しくお願いいたします。私は約3年前に中咽頭ガンで72グレイの放射線治療(手術もあり)を受けています。又、心筋梗塞(ステント治療)の既往症もありです。去年の年末に歯が痛くなり、近くの開業医に受診しましたが、前記の既往症、又重度の歯周病により複数本、抜歯の必要が有るとの診断で治療不可能との事でした。その後放射線科、循環器内科に連絡し、歯科治療について聞くと心臓は特に問題なし。大学病院の放射線科は問題有りのようで、歯科大学に紹介状を書くと言われました。

しかし私の場合、歯科治療の為に仕事を休む事が不可能で悩んでいます。教えていただきたいのですが、私のような場合、先生の所のような専門の口腔外科の医院であれば対応可能でしょうか?又、一般の総合病院の口腔外科等で対応可能でしょうか?大変お忙しい所恐縮ですが、ご回答いただければ幸いです。

【回答】口腔外科総合研究所 樋口均也

咽頭部に放射線を照射すると、咽頭粘膜のみならず口腔粘膜にも放射線粘膜炎が生じます。その結果、粘膜の抵抗力が落ちて細菌感染が生じやすくなります。また、耳下腺や顎下腺など唾液腺が傷害されることによって唾液が出にくくなり、ドライマウスも起こるのです。唾液には細菌感染から身を守るという役割がありますが、ドライマウスになると細菌感染が生じやすくなるということです。

上記の通り、放射線治療によって口腔内の環境が悪化すると、虫歯や歯周病が重症化しやすくなります。現状としては、治療が不可能なほど歯の状態が重症化し、抜く以外に方法がないということなのでしょうね。

ところが、抜歯するしかない歯であるとしても、放射線治療後は簡単に抜歯できるわけではありません。放射線の影響で顎の骨の回復が低下しているため、抜歯後の傷がいつまでも治らず、骨が懐死して痛みが続く場合があるからです。このような抜歯窩治療不全や放射線顎骨壊死を起こすかどうかは、放射線の照射線量によって左右されるものです。

従って、線量が多い場合には抜歯を諦めて歯の温存に努めます。すなわちできるだけ痛みなく噛めるような状態に改善させ、その状態を維持することが治療の目標となります。