口腔外科総合研究所 l 口腔外科 大阪

下顎を前方に移動させる顎位の矯正

年齢 性別 相談日
40代 女性 2011年12月8日

【相談者】2011年12月8日  女性 Y

質問1

矯正後の顔の変貌、体のだるさに悩んでいます。矯正内容は省きますが、スプリントを盛ることによって顎位を高くし、マウスピース矯正を経ました。顎がだるかった訳でもないのですが、顎を出すだけ出したら楽になるというのでかなりスプリントを盛って顔が伸びました。マウスピース矯正でも、歯の部分だけではなく内側にもプラスチック部がついているものを使用し、それが終わった後、眼輪筋が引っ張られたためか、眼の下が大きく窪み黒ずみ、顔が長くなっていました。

姿勢を伸ばして顔を真っ直ぐにすると上下の歯が遠くて普通に口を閉じていても1.5cm以上開いているような感覚です。そのせいか、顔から首肩全体が左下方に引っ張られているようなだるさを常に抱えています。顔が長いのが嫌で、歯を近づけてぎゅっとしても肩が痛くなります。主治医に聞くともう元には戻らないそうです。

眼の下の黒ずみ(2.5cm)、顔の長さ、体のだるさに死ぬほど悩んでいます。顔のどの部分が伸びたのかはっきりわからないのですが(主治医は歯が伸びたと言いますが、それだけではないと思います)、元のように縮めることはできないでしょうか?

【回答1】口腔外科総合研究所 樋口均也

通常の歯列矯正ではなく、下顎を前方に移動させる顎位の矯正をされたようですね。そのために、歯の部分だけではなく内側にもプラスチック部がついているもの、すなわちスプリントが用いられたようですね。

このような矯正がどんな目的で行われたのでしょうか。顎関節の痛みに対してなのか、顔面の非対称性に対してなのか、どのような理由であれ、結果は満足できるものではないようですね。上下の歯が遠く、普通に口を閉じていても1.5cm以上空いているような感覚があるということは、前歯しか接触せず臼歯がかみ合っていない状態であると推測しますが、これでは食事もままならずとても不自由ですよね。

また、下顎が前に出ていることによって下顔面が長くなっているようですね。眼の下の黒ずみの原因は不明ですが、顔面表状筋の張り具合が変化したために生じた可能性があります。

残念ながら、このような症状に対してどんな治療を行うべきかについての明確な答えはないと思います。矯正によって下顎が前方に移動したのですから、単純に考えれば下顎を後方に戻せばよいのですが、確実に戻せる方法がないのです。

あえて挙げるとすれば、矯正治療でⅡ級の顎間ゴムやチンキャップを用いる方法や、整形外科で使用する創外固定装置を取り付けて下顎を牽引する方法が考えられます。他に下顎骨骨切り術で下顎を回転移動させる、顎関節の関節腔を開いて下顎頭を後方へ牽引するなどの手術が考えられます。

【相談者】2011年12月12日  女性 Y

質問2

ご返事有難うございます。上下の歯が遠いのですが、食事をするときはそれなりに噛めています。ただ、真っ直ぐに立つと下顎が長く下へ伸び、歯を噛み合わせると顔が上や下を向き、そのせいか、体を支えるのが辛く、首、肩、腰がとても痛いです。時折のどの下辺りが痛く胃の付近も傷みます。普通に口を閉じていると猫背のように背中が丸くなります。また、左の顎を伸ばしすぎたせいか、顔の左半分が長くなりました。そのためか左に体が折れます。

セカンドオピニオンでも、噛み合わせは悪くないと言われました。このような場合、どのような治療方法があるのでしょうか?単に歯を近づけるだけでは解決しないと思うのです。何か思い当たることがあれば何でもいいので教えていただきたいです。お忙しいところ申し訳ありません。どうぞよろしくお願いいたします。

【回答2】口腔外科総合研究所 樋口均也

首肩腰の痛みについてはまず整形外科を受診し、それぞれの部位に異常がある場合は治療を受けるとよいでしょう。

一方顎位の変化に伴うさまざまな症状への対処法として、いくつかの方向性が考えられます。噛み合わせが悪くなっているということですが、詳しく調べてみれば問題が見つかり、噛み合わせを何らかの手段で改善すれば解決する可能性はあります。ただし、噛み合わせの異常の有無については検査も治療もともに難しく、治療によってますます状態が悪化する危険性もあります。

そもそも顎位を矯正したことから生じた問題なので、元の顎位に戻すという対応も考えられます。そうすれば元通りの調子に戻ることも考えられますが、元の顎位がどの位置にあったのかが見つかるとは限らず、元に戻せるかどうかも分かりません。また、元の顎位に戻せたとしても初めの問題が出現するだけかもしれません。

仮に問題が顎位にあるのではなく、「咬合異常感症」や「口腔顔面痛」などの病気である場合は、顎位を変更しても何ら解決策とはならず、むしろ問題を複雑にするだけです。これらの病気は歯ぎしりや食いしばりが関与している場合が多いものですが、思い当たることはありませんか。上下の歯を接触させないよう常に気をつけることや筋肉のストレッチ、マッサージなどは効果が期待できます。また、夜間の歯ぎしりがある場合は「ナイトガード」というマウスピースのような装置を作製し、装着するという方法もあります。他には抗うつ薬や抗けいれん薬など、違和感や痛みを取り除く効果を持つ薬物療法もあります。