口腔外科総合研究所 l 口腔外科 大阪

術後性頬部のう胞に対する治療法の選択

年齢 性別 相談日
60代 男性 2012年4月27日

【相談者】2012年4月27日  男性 H

質問1

お忙しいところ、ご相談いたします。経緯は、昨秋右上6番(8年前に根管治療している)の歯茎が腫れて出血・痛みがあり、歯科医院で治療をしてもらい、その時にX線撮影で歯根が割れているので抜歯した方が良いと言われたが放置。今年になって出血や歯の動揺も有り抜歯してブリッジにと思い、総合病院の口腔外科を受診。X線写真で上顎洞炎を起こしていることとが判明。さらにCT撮影で上顎の骨が溶けて?胞が眼球のすぐ近くまで大きくなっていることがわかる。

40年近く前に蓄膿症の手術をしていたので、術後性頬部?胞と診断される。根治手術と同時に抜歯する必要があるといわれる。現在、右頬(右目下)に違和感有り、クラビット状500mgを服用している。

それで質問ですが、このまま口腔外科で手術をした方が良いのか、あるいは耳鼻咽喉科で診てもらい、内視鏡手術後に口腔外科で抜歯した方が良いのか戸惑っています。先生のご意見をお聞かせ頂ければと思い、ご相談いたしました。よろしくお願いします。

【回答】口腔外科総合研究所 樋口均也

右上6番の歯根破折と破折部分の根尖性歯周炎、歯性上顎洞炎、術後性頬部嚢胞が生じているということですね。歯性上顎洞炎への対応として、肥厚して炎症が治まらない上顎洞粘膜を?離して取り除き、鼻腔と交通させる穴(対孔)を開ける手術があります。これを「上顎洞根治術」といい、かつては盛んに行われたものの、内視鏡手術が発達した現在ではほとんど実施されていません。

40年前に受けられた蓄膿症の手術とは、上記のようなものではないでしょうか。口腔外科で抜歯と根治術が予定されているということから、現状では上顎洞に本来あった粘膜ではなく、肉芽組織や瘢痕組織があると予想されます。この部分に歯からの感染が及んで炎症が生じているため、これらの組織を掻爬して感染部分を取り除く手術を行うのではないかと推測します。

また上顎洞根治術後10~20年が経過すると、上顎洞の中に粘液が溜まった袋状の病変、すなわち嚢胞が生じる場合があります。この術後性頬部嚢胞は徐々に増大し、顔面が腫れたり、眼球が上に押し上げられてものが二重に見えることがあります。実はこの嚢胞についても以前は摘出手術が行われたのですが、現在は内視鏡で手術するケースがほとんどです。つまり対孔から内視鏡を入れて嚢胞の一部を切り取る開窓術を行えば、9割の嚢胞が縮小して治るのです。ただし残りの1割は嚢胞が複数あったり、骨の形態が複雑であるために従来の手術でないと対応不可能とされています。

CT等で嚢胞の状態を確認されているようなので、内視鏡手術で対応できるか否かについては検討されていると考えられますが、結果として内視鏡手術が困難で、嚢胞を摘出すると判断されたのでしょうか。

嚢胞が眼球下方の眼窩底に接近していることから、摘出手術によって眼窩底の骨に穴が開き(既に開いているかもしれません)、眼球が下方にずれる場合があります。そうなると、ものが二重に見える複視が生じる可能性もあります。口腔内から上顎犬歯上方の粘膜を切開し、上顎洞を露出させる従来の手術を行う場合は、嚢胞を摘出するのではなく、開窓術をとる方が安全かもしれません。

ただし内視鏡手術で対応する場合は、口腔外科では抜歯のみ行い、その際生じた穴(抜歯窩)から上顎洞内を洗浄してもらうとよいでしょう。そして、その後耳鼻咽喉科で内視鏡手術を受け、うまく治らない場合は従来法の手術を検討されてはいかがでしょうか。

【相談者】2012年4月28日  男性 H

質問2

今晩は。樋口先生、お忙しい中お返事頂きましてありがとうございます。

私も初めに、この口腔外科で「抜歯して洗浄するだけ」、また「耳鼻科で内視鏡手術」の事を聞いたのですが、「抜歯・洗浄だけでは?胞は大きいので除去できない」、「内視鏡でも痛み等余り変わりはなく、抜歯しなければならないので・・・」ということでした。

でも、いろいろ調べてみますと内視鏡手術の方が手術や術後の負担も少ないようなので迷っているところです。同じ病院に耳鼻科もあるのですが・・・。

手術する予定でいるので、何となく言い辛いのですが来週受診する時に、再度担当医に聞いてみたいと思います。ありがとうございました。