年齢 | 性別 | 相談日 |
---|---|---|
40代 | 女性S | 2013年10月3日 |
【相談者】2013年10月3日 女性S
質問
複雑な症状で、これまで7名の専門家に診てもらい、やっとスプリント治療で治るという医者と出会い常時装着するスプリントをつけて4ヶ月になりますが、一向に改善の兆しがありません。今後どうしたらよいのか悩んでおります。ご意見を伺えますと幸いです。(長い文章で申し訳ありません)症状の原因)
- 2年前に英国に来て、歯科治療を受けました(もともと歯が弱く、たくさんの治療経験があります)48番と17番の抜歯を同時にしました。ここから悲劇が始まりました。これまで何十年もの間、この歯でしか食べ物をかんでいなかったことに、その歯を抜いてから気づきました。右奥でしか噛んだことがなく、おそらく、かみ合わせたときもその歯しか上下かみ合っていなかったのでは?と今となって思います。
- 抜歯した時は、「17番周辺に大きく炎症があるので、できる限りかきとりました」と医師から言われました。抜歯自体はスムーズ。
- 抜歯翌日→抜歯した部分に違和感があり、その隣の16番も重く過敏になったのを感じる。舌があたる部分も変わったため、しゃべるときにどのように舌を動かしたらよいのか分からない感覚が始まる。しかも、それまで使ったことのない左で食べ物を噛まなければならず、ほとんど、どう顎を動かしたらよいのかわからない状態。
- 抜歯翌日→抜歯した歯科にもう一度診てもらうと、ちょっと炎症があるようなのでと抗生剤を5日分出され、塩水で何度もうがいするように言われる。5日後にまた診て貰うと、表面はきれいに治っているといわれる。
- しかし、抜歯した17番の骨の部分が重く過敏で、隣の16番(特に17番と接していた部分がとても過敏で鈍痛があり、歯を磨くときに響く感じ)が続く。
- 1週間後また歯科に診てもらう。16番のレントゲンをとるが異常はなく、痛みの原因は不明。
- 前歯(6本が差し歯)の何本かに鈍痛を感じるようになる。また歯科でレントゲンを取るが、異常はなく、差し歯をたたいたり、揺らしてみたりするが、強度も問題ない。とのこと。歯茎も健康。
- 17番から前歯全体(歯の裏の付け根全体も)までが重く、常に鈍痛があり、ひどいときは燃えるような感覚。話すたびにプレッシャーがかかり、前歯全体に響く。前歯全体に重石をぶら下げているような感じで、頭を動かすと前歯全部がその方向に引っ張られている感じ。
- かみ合わせも大きく変わったため、無理に左側を使おうとするが、前歯しかかみ合っていないため(奥歯は左右とも噛んでも隙間があるため食べ物を噛み切れない)食べ物を食べるのが困難。食べているときの痛みは特にないがとにかく噛めない。前歯だけががちがちあたる。
- その状態が1年。一番ひどかったのは抜歯後6ヶ月くらい。その後、痛みは少しずつだが楽になった気がするが、一向に奥歯でかむことはできない。
- 1年を経過した辺りから、右顎周辺の筋肉、口の中の一番奥の筋肉が筋肉痛のように痛み、常にストレッチをしたくなるような状態が始まる。
2年たった今の主な症状は。。。。
- 抜歯した17番の骨の辺りと16番に鈍痛。重い。抜歯した部分に食べ物が当たるととても過敏。(鋭い痛みではない)歯茎の辺りを押すと鈍痛。そこから前歯全体にかけて、歯茎全体(口蓋、特に歯の付け根が重い。舌で触ってみるととてもタイトな感じ、締め付けられる感覚。
しゃべるたびに前歯の裏の付け根全体に響く。ただ、何かを食べているとき(飴やガムを奥歯で噛んでいるような状態だと前歯のプレッシャが減るので、いつも何かを噛んでると楽。 - 歯が痛い。という感覚ではなく、上あご全体が常に重く、響く。小鼻の右横を押すと骨に鈍痛を感じる。
- 横になるとプレッシャがかからず、かなり楽。起き上がったとたんにじわじわと前歯全体が重くなってゆくのが分かる。
- しゃべるときに顎や舌をどのように動かしてよいか分からず、特定の音(サ行、タ行)を出すときは前歯ががちがち上下ぶつかる。顎の筋肉がコントロールを失っていると感じる。
- かみ合わせたときに前歯しかかみ合わないため、スプリントをして奥歯を高くしないと何も食べることができない。食べるときに積極的な痛みはない。
- 5週間前にスプリント調整後、特に右顎関節の痛みが強くなり、口をあけるときに激痛。口の内部の一番奥の筋肉がとてもこっていると感じる。
【回答】口腔外科総合研究所 樋口均也
2年前の抜歯を契機に上顎の鈍痛が持続するというお話から、抜歯した部分の骨に細菌感染による骨炎や骨髄炎、上顎洞炎が起こっている可能性があります。
但し、7名の専門家による診察を受けてもこれらの問題が指摘されなかったのであれば、上記は該当しないのでしょう。その場合は「非定型歯痛」、「口腔顔面痛」が考えられ、1年経過以降に生じた痛みは「筋・筋膜痛」であると推察します。
この痛みは抜歯時の神経損傷による「神経障害性疼痛」、あるいはストレスなどの心理的・社会的な要因に端を発する「疼痛性障害」が疑われます。万一それらの原因が見当たらない場合は「本態性疼痛」となります。
これら3種類の痛みに対しては薬物療法が治療の中心となり、抗うつ薬や抗けいれん薬、麻薬性鎮痛薬、アセトアミノフェンなどが有効です。
英国立医療技術評価機構(NICE)の神経障害性疼痛に対するガイドラインは国際的に有名であることからも、イギリスにおける非定型歯痛の治療レベルは高いと推察します。
歯科や口腔外科で薬物療法が受けられない場合は、ペインクリニックや心療内科、精神科で慢性疼痛に対応している医療機関を探されてはいかがでしょうか。