口腔外科総合研究所 l 口腔外科 大阪

放射線治療骨壊死と舌癌の再発

年齢 性別 相談日
20代 女性T 2013年1月27日

【相談者】2013年1月27日  女性T

私の母のことで質問させてください。母は4年前舌癌(多発性)になり、大学病院で放射線と抗がん剤治療で治療しましたが、放射線治療の影響で骨髄炎、骨壊死となってしまいました。

去年の12月から、近くの総合病院で高圧酸素療法を開始しましたが、その結果舌癌が再発し、また左側の下顎を骨折してしまいました。

1月より抗がん剤治療を始め、良く効いたそうです。(現在1クール目後の休薬中です)ですが、特に骨壊死の酷かった左側の顎の辺りの皮膚が欠損してしまいました。主治医の先生はもう1回か2回抗がん剤をして、それから形成外科で移植手術を元の大学病院でしようと思っておられるようです。

家族としては唇のすぐ横と左顎の2cm程下の首のところに、今回穴があいてしまったような変な赤みがあり、次に抗がん剤をしてしまいそこにも穴があいてしまえば命に関わるのではと心配しています。

本当に形成外科で治せるのでしょうか。また、同時に顎の再建手術を行うことはできると思われますか。

【回答】口腔外科総合研究所 樋口均也

舌癌の再発後、抗癌剤による化学療法が奏功して癌組織が壊死を起こし、その部分が空洞化したと考えられます。つまり、皮膚が欠損した部分は癌の再発であると推察します。唇の横と首に赤みがあるということですが、この部分に再発病巣が残存している可能性があり、2回目の化学療法が効けば、ここにも穴が開くかもしれません。

新たな穴について心配されていますが、穴が開くこと自体はそれほどの問題ではありません。むしろ首の癌が周囲に拡大して頸動脈に浸潤すると危険なので、抗癌剤が効く方がよい方向に進むでしょう。

皮膚に穴が開いた別の理由として、放射線治療及び化学療法により血管がダメージを受け、血行障害のために組織に壊死が生じた可能性があります。また栄養状態の悪化などにより、創傷治癒力が低下しているのかもしれません。

化癌療法などにより癌が消失すると、何らかの組織を用いて皮膚の穴を補う手術を受ける必要があります。皮膚や粘膜、筋肉など軟組織の他、骨や歯などの硬組織の再建も今後行うことになります。

放射線照射による骨壊死や抗癌剤の使用を考慮すると、硬軟両組織の再建を同時に行うことは極めて困難でしょう。従って、やはり穴を塞ぐなど軟組織の再建を先行させることになると考えます。

【相談者】2013年1月31日  女性T

こんにちは。先日、母の舌癌再発の件で問い合わせした者です。早速丁寧なお返事を頂き、ありがとうございました。

抗がん剤が効いたのか、抗がん剤の副作用なのか、どちらにしても母には頭頸部の再建手術が必要ということなのですね。

軟組織と硬組織、同時の再建は難易度が高いとのことで、基本的には形成外科で軟組織を再建、その後日をおいて下顎骨の再建となる可能性が高いのでしょうか。

実は、昨日主治医の先生(抗がん剤の先生で、内科の先生です)が欠損した場所的に骨折して折れた骨が穴から突きだしてきてもおかしくないが…とのことで見たところ、骨がいびつではあるが、くっついているのでは。と言われるのです。

元々兵庫医大の口腔外科にかかっていて、そちらの先生からは、もう骨が自力でくっつくことはないと言われていたのですが…。自力でくっつくなんてことはあるのでしょうか。

確かに、穴の後側の骨折した部分は前は窪んでいて、赤みがありました。今はその部分にも穴が広がっているのですが、窪みはなくなり、穴からはくっついた骨が見えています。カスカスの骨ですが…。

続けての質問で申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。

【回答】口腔外科総合研究所 樋口均也

下顎の壊死と骨折、顔面もしくは頸部の皮膚の欠損があることから、何らかの再建術は必要になるでしょう。軟組織と硬組織の再建を同時に行うのか、時期をずらして再建するかは現在の状態などを総合的に判断して決定されるはずです。

放射線骨壊死による骨折の方が自然にくっつくのか否かという件に関しては、くっつかないと推察します。下顎は常に動かす部分なので安静な状態を保つことは難しく、自然にくっつくことは珍しいのです。健康な人が事故やけがで骨折した場合でもそうなのですから、病的に骨折して骨や体の状態が良くない状況でくっつき、治ってしまうという可能性は低いといえるでしょう。