口腔外科総合研究所 l 口腔外科 大阪

骨折時にオトガイ神経が損傷してしまった

年齢 性別 相談日
30代 男性 2015年4月10日

【相談者】2015年4月10日  K

質問

初めましてよろしくお願い申し上げます。昨年9月に、下顎左側のエラの内側3cm位の部分と、下顎ほぼ中央の部分の2カ所を骨折してしまい、チタンプレートで繋ぐ手術を受けました。

骨折時にオトガイ神経が損傷してしまい、下唇左側から下顎にかけて、直径4cm位の範囲で麻痺があります。現在はメチコバールとアデホスの薬治療で経過を観察中ですが、今年中にプレート除去手術があるため、その際に神経再生手術は可能かと思い質問させて頂きました。

先生の診断では、触った感覚はあるため、神経は完全には切れていないので、手術は出来ないとの事でした。現在はレントゲン画像などで、オトガイ神経の状態を確認させて頂いてはいないのですが、画像などで判断できますでしょうか?また、薬以外の治療があれば教えて頂けると助かります。よろしくお願い申し上げます。

【回答】口腔外科総合研究所 樋口均也

左側下顎角部(エラの部分)の骨折により、この部分の下顎骨内部を走行する下歯槽神経に傷がついた可能性があります。この神経は小臼歯の下方にあるオトガイ孔から骨の外に出る際オトガイ神経と名を変え、下唇を走行しています。

下歯槽神経の損傷により、オトガイ孔の知覚麻痺が生じているのでしょう。神経が完全に断裂している場合は、知覚が消失するため治る見込みはありません。その場合は足の神経などを切り取って移植する神経移植術が行われますが、手術後も多少の知覚麻痺が残ることは避けられません。現在の症状は完全麻痺ではなく部分麻痺のようですね。

現状と神経移植術後の状態には大きな違いがないと判断された結果、「手術は出来ない」という説明になったと推察します。手術をすれば神経を摂取した部分(足など)に知覚麻痺が生じるため、手術をするメリットがないのでしょう。

オトガイ神経や下歯槽神経の状態を画像で判断することはできません。オトガイ神経については触覚や温度覚を精密に検査する方法はありますが、一部の大学病院でしか実施されていません。

一方、神経麻痺に対しては薬以外に星状神経節ブロック、筋赤外線照射、低出力レーザー照射、はり治療がありますが、これらの治療が有効なのは受傷直後であり、7ヶ月が経過した今となっては、残念ながらほとんど効果は期待できません。従って、長期的に回復を待っていただくことになるでしょう。