年齢 | 性別 | 相談日 |
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40代 | 女性 | 2012年4月6日 |
【相談者】2012年4月6日 女性 S
質問
1年7カ月前に親知らずをいっぺんに4本抜きました。左下の唇に痺れが未だに残っています。最近は、痺れが酷い時は、唇が少し左に流れて行くようになりました。医者は、「神経に傷は着けてない。9割型治っている。唇が流れて行くなんて、絶対にあり得ない」と。痺れが酷い時は、本当に左に唇が流れて行きます。人にも指摘されるようになりました。
今の先生を信じて通院するべきなのでしょうか?大学病院並みに大きい病院です。もう、元には、戻らないのでしょうか?
【回答】口腔外科総合研究所 樋口均也
今回のしびれは下顎親知らずの抜歯と関係していると推測します。下顎骨の中には下顎管が走行し、親知らずの根の先端付近を通過しますが、この管の中には下歯槽動脈や静脈などの血管とともに下歯槽神経が入っています。親知らずの抜歯時にこの神経が傷つくと、歯や歯肉、下唇の感覚が鈍くなったり、ピリピリとしびれが切れたようになったりします。
「神経を傷つけていない」という先生のコメントから、親知らずと下顎管との間に距離があり傷つく可能性はないと思われたのでしょう。確かに親知らずの抜歯後の腫れにより、神経が圧迫されて麻痺が生じるケースがありますが、その場合は数日~数ヶ月で麻痺は消失するものです。しかし1年7ヵ月が経過しても麻痺が残っているのですから、やはり神経が傷ついていると考えられます。
また、下歯槽神経は知覚を司る神経であり、唇を動かす運動神経ではありません。唇を動かすのは顔面神経の下顎緑枝と頬筋枝です。知覚神経が傷ついた後、回復途中で運動神経と連絡し、知覚麻痺と運動の異常が生じる場合はありますが、今回傷ついたのは顎骨の中であり、ここに運動神経はありません。従って、神経の損傷そのものが唇の流れを直接引き起こす可能性はないでしょう。
それでは、なぜ下唇の流れが生じるのでしょうか。部分的な顔面神経麻痺が生じている可能性も考えられないわけではありません。また、神経麻痺が生じるとその部分の温度低下と筋萎縮が生じるため、その影響から下唇の流れが起こったのかもしれません。
下歯槽神経麻痺の治療法には星状神経筋ブロック、遠赤外線照射、ビタミンB12製剤、ステロイド剤、漢方薬などがあります。しかし、これらの治療は神経損傷の直後から開始すれば効果的ですが、抜歯後1年以上となると、残念ながら治療が成功する確率は低いと考えます。神経麻痺の治療は麻酔科で行われる場合が多いものですが、その病院には麻酔科がないのでしょうか。麻酔科か歯科麻酔科に紹介してもらえるよう、相談されることをお勧めします。