口腔外科総合研究所 l 口腔外科 大阪

親知らず抜歯後の麻痺

年齢 性別 相談日
20代 女性 2010年5月29日

【相談者】2010年5月29日 20代 女性 K

今年の2月に親知らずを抜歯しました。そのとき、歯が深くまで生えていて、1時間15分くらいかかりました。その後、神経は傷つけてないけど、治りを早くするために点滴を受けて帰ってと言われ、受けて帰りました。次の日、消毒のために再度病院へ行ったら、今日も点滴をして帰ってということでした。

抜歯後、麻酔が切れてもしびれは残ったままでした。深かったからかなと思いましたが、1ヶ後の検診のときにも、親知らずを前唇の右側、右前のあごは感覚が戻りません。病院でそのことを伝えても、もう1ヶ月様子を見ましょうということで、1ヶ月前にもらったメチコバールとトリノシンという薬を再度渡されました。

感覚がないので、口の中をよく噛んでしまい。腫れたり口内炎ができたりしてしまいます。治るまでにはどのくらいかかるのでしょうか。術前にはこんな風になるとは聞いてませんでしたが、保障はしてもらえるのでしょうか。また、結婚し子供を作りたいと思っているのですが、上記の薬を飲んでいる状態で妊娠しても影響はないのでしょうか。

【回答】口腔外科総合研究所 樋口均也

親知らずの抜歯に1時間15分も要したということから、かなり深く埋まっていたのでしょうね。ところで、下顎の親知らずの根尖付近には下歯槽神経という神経が走行しており、親知らずの埋まり方によっては根の先が神経と接触していたり、絡んでいたりする場合があります。

従って、抜歯すると神経が傷ついて歯や歯肉、顎骨、舌、頬、下唇に及ぶ麻痺が生じるケースもあり、そうなると粘膜を噛んで口内炎が生じたり、下唇にごはん粒がついても気付かないかもしれません。また、麻痺は数ヶ月でなくなる場合もありますが、永久に治らない可能性もあります。

このように、親知らずの抜歯には神経麻痺の可能性がつきまとうものですが、病院の口腔外科の先生であればそれを十分に承知しているはずですから、抜歯の際にも注意されたことでしょう。しかし、それでも麻痺が実際に生じてしまったのですから、これはもう不可抗力ともいうべき避けられない事態であると考えます。

麻痺の可能性についても事前に説明があったはずですがいかがだったでしょうか。麻痺などのリスクがあっても抜歯する必要性の方が高かったのでしょうか。この点についての説明があり、同意されていたのでしたら結果的に麻痺が生じたことに対して保障を及めることは難しいでしょう。別の状態があったのなら保障される場合もありますので、法律の専門家に相談されるのもよいでしょう。

メチコバールはビタミンB12製剤、トリノシンはATP製剤でいずれも神経が再生するのを助けます。妊娠中に飲んでも大丈夫かどうかの安全性については(ほとんどの薬がそうですが)確認されていません。どちらの薬も数ヶ月内服して効果をみるものであり、年単位で飲む必要はありません。今すぐ結婚して妊娠するのでない限り、回復を期待してしばらく内服してみてはどうでしょうか。

【相談者】2010年6月2日  20代 女性K

丁寧な回答ありがとうございました。総合病院に行く前に、普段通ってる歯科医で、絶対抜いたほうがいいと言われ、手術を受けることにしました。総合病院を紹介され、術後、神経は傷つけていないから大丈夫と先生から言われ、安心していたのに、とても残念です。こんなことなら抜かなければよかったと毎日思います。

知り合いの医師に話したところ、神経を刺激してしまったんだろうとのことを教えてくれました。とりあえず、しばらく様子をみてみることにします。