口腔外科総合研究所 l 口腔外科 大阪

オトガイ形成術後に生じた痛み

年齢 性別 相談日

30代

女性

2020年08月31日

質問1

口腔外科でオトガイ形成をうけたあと、1週間後くらいから下の前歯が力をいれるとうずくような痛みが出始め、今はしたのは全体のうずきがひどくなり、つねに歯が浮くような感じがあります。特にあくびをしたり起き上がる時などはひどく痛みます。病院からは様子見といわれていますが、後遺症が残ったのではないかと不安です。

【回答1】口腔外科総合研究所 樋口均也

オトガイ形成術は下顎骨切り術と同時に行うケースが多いですが、オトガイ形成術のみを受けられたのでしょうか。その場合は下顎前方部であるオトガイ部に形態異常があり、それを修正されたと推察します。

オトガイ部の形態異常には幾つかのタイプがあります。下顎前突症(受け口)で顎がしゃくれたように前に突出している場合や下顎が長い場合、小下顎症のためオトガイが後退して小さい場合などです。このような場合はオトガイ部の骨を下顎骨本体から一旦切り離し、後方や上方、前方に移動させてオトガイの形態を修正します。

術後1週間で前歯に痛みが生じ、全体の歯が痛むようになったということですが、オトガイ形成術で直接歯を傷つける可能性は低く、噛み合わせも変化しません。歯に関連する神経が傷つかないように手術するため、歯が痛む原因は見当たりません。

とはいえ、実際には何らかの痛む理由があるのでしょう。下顎の骨は顔面の骨を含む頭蓋骨と顎関節でつながり、口を開閉する際に比較的自由に動きます。骨は硬いため開閉口する際に下顎骨が一体となって動きますが、多少のしなりはあるので開口時は骨の幅がわずかに狭まります。オトガイ部の骨切り術により、術後は下顎骨全体の強度(剛性)が低下して開口時に骨の幅が術前より狭くなった可能性があります。それがあくびをする際に痛む原因かもしれません。

手術の影響で下顎骨の強度が低下し、噛みしめる際に歯に加わる力を支える骨が受け止めきれなくなっていると推察します。起き上がる時に痛むのは、噛みしめる癖が原因となっている可能性があります。

従来から噛みしめ癖があっても、術後1週間は用心して噛みしめていなかったとも考えられます。術後1週間が過ぎて徐々に元の生活に戻るにつれ、噛みしめ癖が戻ってきて痛みが生じたと推察します。

さて、痛みへの対応は噛みしめないように注意することに尽きます。あくびをする時は大きく口を開けないように注意しましょう。一度切り離したオトガイ骨は徐々に下顎骨本体に付いて一体化していきます。そうなれば、下顎骨の強度も元の状態に戻っていきます。