口腔外科総合研究所 l 口腔外科 大阪

下歯槽神経損傷による腫れと痛み

年齢 性別 相談日

40代

女性

2022年11月7日

質問1

2年半前に局麻で智歯抜歯の際、オトガイ神経を損傷され抜歯を中断しました。そこで抜歯後感染で骨髄炎になってしまい、後日、全麻で残りの歯の抜歯と骨髄炎の手術をしました。

しかし膿が取りきれておらず別歯科で再び骨髄炎と診断され再手術をしました。ここまでの間に服薬やレーザーなどの治療もしています。

その後、麻痺の痛みが収まらず別の歯科で更に3回目の骨髄炎と診断されました。腐骨が下歯槽神経を巻き込んで損傷してるのに前回の再手術でもきちんと取りきれててない、との事でした。

そして別歯科で顎骨から骨髄ごと除去する骨髄炎の手術と下歯槽神経の縫合手術をしました。手術後、下歯槽神経の縫合をした事により顔の圧迫感はマシになりましたが最初のオトガイ神経損傷部分の痛みはきつく、下唇の内側に神経が浮き出て腫れています。

この痛みを少しでもマシにしたいのですが浮き出てる神経はどうする事もできないでしょうか。大学病院や口腔外科、神経内科、麻酔科、計20軒近くの病院で診察しましたが「ややこしい案件なので関わりたくない」という様子でした。

オトガイ神経の腫れをどうにかする方法などありましたらご教授の程よろしくお願い致します。長文失礼しました。

【回答1】口腔外科総合研究所 樋口均也

下顎智歯(親知らず)を抜歯する際に、 智歯に近接して下顎骨内を走行している下歯槽神経が傷ついてしまうことがあります。オトガイ神経は下歯槽神経の末端の枝の1つで、下顎骨内を走行していた歯槽神経が、下顎小臼歯部から外側(頬側)に出る部分から先をオトガイ神経といいます。オトガイ神経はその後下唇に分布します。

下歯槽神経が障害されると歯や歯肉、下唇にしびれや痛みが生じますが、特に下唇のしびれや痛みが顕著といえます。このような痛みを神経障害性疼痛といい、この痛みに対しては抗うつ薬や抗けいれん薬を第一選択薬として使用します。腫れを取るためには漢方薬(五苓散、桂枝加朮附湯)の服用が効果的かもしれません。

質問2

ご返信いただきありがとうございます。アロディニアと診断され、その漢方薬もそれ以外の漢方薬も何種類か試したのですが効果がありませんでした。鍼治療も効果なしでした。

骨髄炎によるvincent症状の麻痺は下歯槽神経の手術により軽快しましたがオトガイ損傷による麻痺は増幅しています。下歯槽神経とオトガイ神経はつながっているのに、手術は下歯槽神経のみに効果が有りオトガイ神経には効果が無かった、という事でしょうか。

【回答2】口腔外科総合研究所 樋口均也

vincent症状は骨髄炎により下歯槽神経が損傷し、下唇部の知覚鈍麻が生じる現象です。下歯槽神経に対する手術により、下歯槽神経の枝であるオトガイ神経の感覚が正常化したのでしょう。

「vincent症状の麻痺」と「オトガイ損傷による麻痺」は同じ症状を指すはずですが、異なる症状として感じられていることに疑問をおぼえます。下歯槽神経とオトガイ神経はつながっているため、下歯槽神経の手術によりオトガイ神経の症状も改善していると考えられます。

前回も書きましたが、親知らずの抜歯により離れているオトガイ神経が傷ついた理由については医学的見地から説明が不可能です。

質問3

なぜ抜歯から離れているオトガイを損傷したかについては下歯槽神経を損傷したから末端のオトガイまで損傷してるのだと思いますが、なぜ下歯槽神経は改善したのにオトガイは改善しないのかについて、下歯槽神経の縫合手術で一旦損傷部分を切除して人工神経に置き換えてますがそれは関係ありますでしょうか。

【回答3】口腔外科総合研究所 樋口均也

「 下歯槽神経を損傷したから末端のオトガイまで損傷している 」とのお考えは、その通りでしょう。傷ついたのは下歯槽神経であり、その影響がオトガイ部にまで波及し、強い症状が現れやすいのがオトガイ部です。

「 下歯槽神経の縫合手術で一旦損傷部分を切除して人工神経に置き換えて 」いて、「顔の圧迫感」や「vincent症状の麻痺」は軽減したということなので、オトガイ部の症状が改善しても不自然ではありません。手術の効果が限定的で、オトガイ部も含めて下歯槽神経全体に損傷からの回復が十分な状態に至っていないと推察します。

謝辞 2022年11月9日
お忙しいところ長い質問にお付き合い頂きありがとうございました。感謝申し上げます。