口腔外科総合研究所 l 口腔外科 大阪

親知らずを抜く必要性

年齢 性別 相談日

40代

女性

2021年2月8日

質問

お忙しいところに恐れ入ります。19歳娘の親知らずについての質問になります。定期受診の際、いらない歯ですから4本とも抜いたらどうですかと説明を受け、大きな病院を受診しました。紹介先の病院では、全身麻酔で4本同時抜歯・1泊入院の説明を受けました。

歯の状態ですが、痛みや虫歯はなく、上2本は頭を出してきて、下2本は横向きに埋まっており、7番目の歯(歯のタテ半分くらいのところ)に向かって当たっているような状態です。また、レントゲンでは下2本とも親知らずの根元に下顎管が重なっており、一般的な話として、術後の神経麻痺などのリスク説明があり、不安に思っておりますが、抜いておくことがベストなケースでしょうか。また、全身麻酔で抜くことや4本同時に抜歯することのメリットとデメリットは、どのようなことがあるのでしょうか。いらない歯という以外に抜くべき根拠がはっきり示されたわけではなく、悩んでおります。ご回答いただけますとありがたく存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

【回答1】口腔外科総合研究所 樋口均也

一般的に親知らずは抜くことが多いといえますが、全てのケースに該当するわけではありません。上下の親知らずが正しく噛み合っていて、歯磨きが難しくない場合に抜く必要はありません。むしろ親知らずも噛むという行為に役立つため、積極的に残すべきでしょう。

一方、抜いた方がよい親知らずもあります。歯磨きしにくい親知らずがあると、歯垢(プラーク)が残ったままの状態が続き、むし歯や歯周病に罹患する可能性が高くなります。親知らずがむし歯や歯周病になると、困ったことに親知らずの手前の歯まで巻き込まれることがあるため、親知らずを早期に抜く必要があるのです。

横向きに埋まった親知らずの場合では、完全に埋まっている場合は抜く必要はありません。ただし、手前の歯との間に深い歯周ポケットが形成されている場合は抜く必要があります。手前の歯の歯周病が進行するリスクが高いからです。

下顎管と重なっている親知らずを抜くと、神経損傷(麻痺)の可能性があります。このような場合は、歯冠のみを除去して歯根は残す「歯冠切除術」に切り換えることにより、麻痺のリスクを避けることができます。


親知らずは右側と左側に分け、期間をおいて抜くのが一般的です。右の抜歯後はしばらく右では噛めず、左で噛むことになります。左についても同様です。左右同時に抜くと、右でも左でも噛みにくくなり、健全な食生活を営むことが困難になります。ただし、これは外来で抜歯する場合のことで、入院して全身麻酔下で抜歯する場合は4本同時が一般的です。術後しばらく入院し、流動食などで過ごすことが前提となるためです。