口腔外科総合研究所 l 口腔外科 大阪

顎変形症の手術後から続く痛み

年齢 性別 相談日

40代

男性

2021年10月28日

質問1

2020年より歯科矯正をしており、2021年の1月に歯の噛み合わせ改善の為、顎変形症の手術を受け、上顎と下顎の骨を切りました。10ヶ月経過しましたが、鼻から上唇の痺れが取れず、黙っていても常にビリビリし痛みがあります。鼻水が垂れてもわからない一方、唇は過敏になっており、ゴムの歯間ブラシがあたっただけで痛みを感じます。術後すぐは頬や下顎にも痺れはありましたが、こちらは改善しました。

鼻から上唇にかけては頬や下顎にあった痺れとは異なり締め付けられるような強い痺れがあります。術後に鼻が広がないように、鼻の中央と両サイドを糸で結んでいるそうです。
この糸が痺れに関係している可能性はありますでしょうか。

主治医の先生は時間の経過を待つしかないとおっしゃっていますが、日々ストレスを感じています。何かできる事はないでしょうか。

また今月に入り、吸収プレートが歯茎から突出してきました。主治医の先生は問題ないとおっしゃっていますが、歯茎が痩せてきているのでないか心配です。このまま様子をみて問題ないでしょうか。

チタンプレートの除去手術を受けたいと考えていますが、術後に頬がこけ、鼻の下が伸びた印象になってしまいました。除去手術を受ける事に顔の変化や、痺れの悪化を懸念し、なかなか手術に踏み切れません。プレートはやはりは除去した方がいいのでしょうか。除去しない場合のデメリットはどのような事が考えられますでしょうか。

【回答1】口腔外科総合研究所 樋口均也

顎変形症に対して、上下顎骨切り術で顎骨の位置を移動して嚙み合わせを整えたということですね。通常、手術の際に神経が傷ついても時間の経過とともに治っていくものですが、中には治りきらず「神経障害性疼痛」が生じる場合もあります。

神経障害性疼痛は、感覚の麻痺と痛みが同時発生することが特徴です。治療法としては、一般的な痛み止め(消炎鎮痛剤)では効果が期待できないため、抗うつ薬や抗けいれん薬を内服することになります。他に麻薬系鎮痛薬や漢方薬なども使用することもあります。

骨切り術の際に鼻の形を整える手術も同時に行われ、鼻の中央(鼻柱)と両サイド(鼻翼)にナイロン糸をかけて引っ張り、鼻が横に拡がらないようにしているようですが、ナイロン糸をかけていても痛みが生じることはありません。従って、今回の痛みや痺れとは無関係でしょう。

骨切りして移動した骨に対して、時間とともに溶けてなくなる吸収性プレートと吸収しないチタンプレートの2種類を併用して固定したようですね。吸収性プレートに関しては粘膜が裂けて口腔内に露出しても問題のないケースが多いですが、ご心配であれば再度担当医と相談されることをお勧めします。

一方、チタンプレートは1~2年後に除去することもあれば、一生そのまま置いておくこともあります。心理的に抵抗感がない場合はあえて除去する必要はないでしょう。

質問2
先日は、ご回答いただきありがとうございました。大変悩んでおり、またご相談させて下さい。痺れや麻痺の酷い左上の歯茎が右側と比べて、痩せてしまい4本歯の根元が出てきていることに気がつきました。吸収プレートもこちら側からだけ日毎に出てきています。

もともと術後の痛みはありましたが、最近は歩く振動で痛みを感じます。定期的にクリーニングをしていただいている歯医者さんでレントゲンをとっていただきましたが、虫歯や歯茎の腫れ等の異常はありませんでした。再度、口腔外科も受診しましたが、特に問題ないとの事でした。

最近になって出てきた歩く振動で痛む原因がわからないので、矯正のワイヤーを外して様子をみる事になりましたが、痛みがおさまらなかった場合にワイヤーを外し続け、後戻りしてしまい今までの矯正が無駄になってしまうのではと大変不安です。

何か考えられる原因はありますでしょうか。私の考えとしては、多少の痛みがあっても矯正を続けたい気持ちもあります。その場合、歯や歯茎に悪影響はあるのでしょうか。主治医の先生にも相談していますが、樋口先生のお考えもお聞かせいただきたいです。どうぞ宜しくお願いいたします。

【回答2】口腔外科総合研究所 樋口均也
歯肉が痩せて歯根が露出するという現在の症状はよくみられる問題ですが、多くは歯磨きの際に歯を強くこすり過ぎて歯肉を傷つけていることが原因です。術後は知覚麻痺が生じやすいため、こすり過ぎに気づいていないのではないでしょうか。

また、歯肉が痩せる原因として次のような可能性も考えられます。手足の神経が傷つくと筋肉が萎縮して冷たくなるように、神経の障害によって歯肉が委縮したのかもしれません。他にも、矯正治療が不適切で歯肉が痩せてきたという可能性もあります。

歩く振動で痛む原因が神経障害性疼痛にあるのか、矯正治療時の歯の移動に伴うものであるのかについて、他の問題の関与の有無は不明です。矯正のワイヤーを外してみて痛みが生じない場合は矯正治療が原因となりますが、ワイヤーを再装着して痛みを我慢し矯正治療を継続するのか、あるいは断念するのかを決断する必要があります。ワイヤーを外しても痛みが変化せず持続する場合は、ワイヤーを再装着して矯正治療を再開することをお勧めします。