口腔外科総合研究所 l 口腔外科 大阪

口腔セネストパチーによる諸症状

年齢 性別 相談日

40代

女性

2022年3月26日

質問1

68歳の親の症状でご相談です。三年前より口腔外科に通院しており、ドライマウスでサラジェンを処方されています。また、呂律が悪く、日によって喋りにくいことがあり、舌の位置を矯正する為、夜だけ装着するマウスピースを作りました。いずれも症状に改善は見られないのですが、二年前ぐらいから、口の中に違和感があると訴えています。

最初の頃は、歯に食べ物全てが挟まるから一口ごとにうがいをしなければ何も食べられないといった訴えから始まり、歯が全てすきっ歯になってしまった、噛み合わせが逆になってしまった、口の中に金属が入ってきてものすごい力で押さえつけられている、口の中にトラックが入り込んできた、歯が変で口の中の違和感が辛い、といった内容になってきました。実際に歯並びを見ても、昔から何も変化はなく、何もおかしくなっていないよと教えても違和感の訴えは続いています。

ネットで調べていたら、口腔セネストパチーという病気を見つけ、正にこのことではと思っています。この場合、ドライマウスや呂律が回りにくい症状も、前兆だったのでしょうか。

【回答1】口腔外科総合研究所 樋口均也

口腔セネストパチーが生じていると推察します。口の中の感覚は、主として感覚をつかさどる三叉神経によって脳に伝えられます。また、口の動きは顔面神経などの運動神経を通して脳がその動きをコントロールしています。

このように、口が乾く感覚や口の動きには全て脳が関与しています。客観的には口の乾きが確認できず、口の動きが悪く見えなかったとしても、本人にとっては口が乾き、呂律がまわらない深刻な状態で、原因は脳の働きの異常であると考えられます。

口の中に奇妙な感覚を持つ病気を口腔セネストパチーといいます。この病気の原因は不明ですが、統合失調症やレビー小体型認知症の症状として現れることもあります。

口腔セネストパチーに対する画期的な治療法はありませんが、向精神薬や漢方薬の服用、認知行動療法により症状が和らぐ場合もあります。

質問2

本日回答頂いた者です。ご丁寧なご説明、ありがとうございました。本人の訴えを聞いていると歯や口のフィジカル的な問題と思えるものの、脳や神経のコントロールが影響しているであろうことが分かり納得しましたし、少し安心しました。

呂律が悪いと感じた時に脳神経内科で検査をし、大脳皮質の難病の気配がある可能性が考えられると、言われたことがありました。三叉神経というのは、大脳皮質と関連するものでしょうか。

本人はあくまで歯や口そのものがおかしくなってしまっている(時には口の中の痛みの訴えもあり)との認識なので、家族としては一体どこに原因があるのか、少しでも知ることができて症状の理解をしてあげることができればという思いです。

【回答2】口腔外科総合研究所 樋口均也

三叉神経は第5脳神経であり、脳と直接つながっています。脳は延髄や小脳など生存に直接関係する脳幹や、大脳皮質という高度な思考をつかさどる部分など、異なる機能を持つ部分に分かれています。三叉神経を伝わる感覚の信号は脳幹を通り、最終的には大脳皮質に到達して「この感覚は正常ではない」「口の中に何か問題が生じているに違いない」といった思考が生まれることになります。

謝辞 
大変分かりやすいご説明をありがとうございました。なかなか症状を理解してあげるのが難しい状況だったのですが、説明を聞いて、脳を通してどのような感覚として本人が感じるものなのか、なんとなく仕組みを理解することができたように思います。大変参考になりました。このように、確信が持てない疑問の問い合わせ窓口があって大変助かりました。ありがとうございました。