口腔外科総合研究所 l 口腔外科 大阪

上顎の嚢胞性病変への対処法

年齢 性別 相談日

50代

女性

2024年9月28日

質問1

かかりつけ歯科医にこれ以上聞けないので、こちらに質問させていただきたく存じます。インプラント治療後、CTの所見から反対側第3臼歯(無髄歯)の歯茎に大きな膿の袋の様なものがあることが分かりました。まず、通常のクリニックでしたので、どのくらい大きいかがよく分からず、インプラントを入れてくれたA医師は、非常勤の嚢胞専門のB医師との相談の時間をとってくれました。B医師は、「大きいが、形を見ると悪性には思われない。しかしもちろん、検査をしなければならない。サイナスは必須。」

来年から2年任期海外赴任の可能性があることを伝えると、A医師もB医師も「すぐに治療せずともいいかもしれない」と。同時に「ただこれがどのくらいの速さで成長したかを知りたい、病理検査は必須」と繰り返されました。A医師とB医師はその場で相談し、口腔外科医のC医師の意見を聞く機会を作るべきと結論されました。

昨日、C医師(神奈川県の口腔外科では有名な大学病院の助手の先生で、A医師のクリニックには2週間に一度こられている)はCTを見られて、「歯科クリニックのCTでは映りきらないほど大きい、これがどのくらいの速度で成長したかが問題、また病理検査は必須どころか、緊急に治療に取り掛かる必要がある」と言われました。来週、C医師勤務の大学病院口腔外科に予約を入れることになっていますが、この様に医師の見立てが次々と変わったことに不安を感じています。

まず、
①それほど大きな「歯根嚢胞」(あくまで疑いですが)が、なぜ無症状なのでしょうか。
②C医師は治療は待てないと即断されましたが、A医師もB医師も、一旦経過観察で、海外赴任から帰るのを待ってもいいかもしれない、との意見でした。口腔外科の見立ては、より深刻だということでしょうか。

あとは、病理検査の必要にも不安があったのですが、嚢胞摘出の場合、基本、必ず検査はするものと聞いて、少し安心しました。現在こうした状況です。もし、先生の貴重なご知見より、なぜこのような意見の相違が出てきたのかをご解説いただけますと誠に幸いです。お忙しいところ恐縮ですが、何卒よろしくお願いいたします。

【回答1】口腔外科総合研究所 樋口均也

① 歯根嚢胞は多くの場合において症状が出現しません。今回と同様、他の歯科治療の際にエックス線検査で偶然発見されることが多い病気です。中には痛みや腫れといった症状から歯根嚢胞が判明する場合もあります。

② 歯根嚢胞であれば、治療を急がなくても大きな問題は生じません。治療できる時点で治療すればよい病気です。C医師が確認したいことは、この病変が悪性腫瘍か否かという点であると考えられます。悪性腫瘍であればすぐに治療を開始する必要があるため、歯根嚢胞か悪性腫瘍かを見究める目的で、病変の一部の試験切除を提案されていると推測します。