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40代
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女性
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2022年6月22日
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質問1
70代の母のことで相談させて下さい。先日がんの骨転移告知を受け、デノスマブ(ランマーク)治療が始まりました。病院側から副作用について何も説明なく1回のみ投与を受けてしまったのですが、その後調べて顎骨壊死の副作用について知り、とても不安になっております。
かかりつけの歯科医(口腔外科)に相談したところ、顎骨壊死のリスクになり得る歯(下顎奥歯に根尖病巣=歯冠大の歯根嚢胞、神経に接近している)があるとのこと(現在自覚症状なし)。抜歯するなら投与回数の少ない今がいい、今抜歯しないなら今後症状が出たときに根幹治療で対症療法となり、以後抜歯は行わない。どちらにするかは自分で決めるようにと言われています。
いずれを選択しても顎骨壊死のリスクを孕んでおり、非常に頭を悩ませております。難しい選択ですが、爆弾を抱え続けるより今抜歯した方がいいだろうと気持ちは固まりつつありますが、いくつか疑問点があり、先生のご意見やアドバイスを頂けたら幸いです。
(質問1)
抜歯しない場合、歯根嚢胞は今後症状が出てからの治療でいいのでしょうか?また、根尖病巣は上記の歯以外にも2~3あるそうですが、それはたいしたことないから問題ないとのこと。これらも症状が出てからの根幹治療というのは一般的ですか?(歯冠大のものに比べレントゲン写真で黒く映っていたものは大分小さかったです)ちなみに今後は月1回のペースで定期診察を受ける予定です。
(質問2)
素人の検索で得た知識ですが、歯根嚢胞に対する治療の選択肢としては以下の3通りあると理解しましたが合っていますでしょうか。歯根端切除術は大臼歯の場合は不可との情報も見ましたが、実際選択肢としてあり得ますか?
① 抜歯+嚢胞摘出
② 根幹治療のみ(抜歯なし)
③ 歯根端切除術+嚢胞摘出術(抜歯なし)
①③は顎骨壊死のリスク因子とされている「骨への侵襲的歯科治療」に該当するのでやるなら今、②の根幹治療自体はリスク因子ではないものの、根幹治療がうまくいかなかった場合、将来的に侵襲的歯科治療が必要になり、その際は「ランマークの投与期間」がリスク因子となってくる(今後骨髄抑制を伴う治療も予定していることから炎症リスクは高くなると思われる)。このような考えから現時点での①に気持ちが傾いていますが、②とした場合のリスク評価を教えて頂きたいです。根幹治療を繰り返し、炎症状態が継続してしまうリスクはそれなりに高いと思われますか?また、根尖病巣の再発リスクという意味では①→③→②の順に安全という理解で合っていますか?
(質問3)
上記で挙げたリスク因子は2016年の顎骨壊死についてのポジションペーパーに基づいたものですが、それ以降「抜歯そのものはリスク因子ではなく、根尖病巣などの感染源となり得る歯は早期に積極的に抜歯した方が顎骨壊死を予防できる」「抜歯前のランマーク休薬は必要ない」とする研究結果が発表されていると承知しております。抜歯のリスクや抜歯後の休薬について、現時点でのコンセンサスはどうなっているのか、分かる範囲で教えて下さい。(乳腺主治医は抜歯前3ヵ月の休薬、歯科医は休薬必要なしと意見が相違しており、これも悩みどころです)
以上、まとまりなく長文の質問で申し訳ございません。宜しくお願い致します。
【回答1】口腔外科総合研究所 樋口均也
大変ご心配されている様子なので、初めに最も重要なことをお伝えします。デノスマブ(ランマーク)による顎骨壊死の発生頻度は、がん患者全体の1.8%とされています。ほとんど無視してもよい数値ですから、過剰なご心配は無用といえるでしょう。
根尖病変があるということですが、 現在無症状であれば今後も問題が生じない可能性が高いと思われます。加えて、その根尖病変が近々顎骨壊死を引き起こすとも考えられません。運悪く症状が生じた場合は、その時点で治療を受けましょう。万一抜歯が必要となっても、抜歯後に骨面が露出しない抜歯方法を行うことにより、顎骨壊死が生じることはないと推察します。
上記の通り、歯の心配よりがん治療に専念されることをお勧めします。がん治療を良好な状態で進めていくためには口腔内を清潔に保つことが重要で、それ自体が顎骨壊死の予防となります。歯科では当面念入りな診察を受けながら、経過を観察しましょう。
治療方法のもう一つの選択肢は抜歯後に嚢胞を摘出し、抜いた歯を元の位置に戻す再植術です。また、休薬すれば顎骨壊死が起こりにくくなるというデータは存在しません。むしろがん治療の妨げとなるため有害といえます。
質問2
この度は早速ご回答下さり有難うございます。大きな不安の中、このような相談の場を設けて下さっていること、とても心強く思っております。1.8%は結構高い数字と個人的には受け止めています。
歯根嚢胞のある箇所は現在無症状ですが、過去に何度か歯ぐきにニキビ様のものができたことがあるそうです。特に治療せず自然治癒したのですが、先生曰く、自分の免疫の力で自浄作用が働いたのだろうとのこと。過去に症状があったということは、繰り返す可能性もありますか?
今後、同じ症状が出た際、がん治療薬による骨髄抑制下では炎症がひどくなり、それが顎骨壊死に繋がらないか心配しています。このケースでも現時点で予防的に抜歯や歯根嚢胞に対する治療はしなくて問題ないでしょうか。
先生のお話を伺って、過度に心配することはないのかもと少し力が抜けました。「顎骨壊死は治療が難しく、とにかく恐ろしい病気である」との思いに支配されてしまっていますが(歯科医もそのように言うので・・・)、今は治療法もあり、運悪く発症してもなんとかなると思っていいですか?
歯根嚢胞の治療法や休薬についても別途お答え下さり有難うございました。休薬については、抜歯の為にがん治療が3ヵ月以上延期されるのはとても受け入れられないと思っていたので、大変参考になりました。
【回答2】口腔外科総合研究所 樋口均也
1.8%という数値について、高いという認識には当たらないと推察します。人間を含む生物を対象とした研究や調査では、有意水準は一般的に5%と設定されます。即ち5%以下は誤差の範囲内とし、考慮の範囲外とするのが医学・生物学の常識的な捉え方です。
過去の調査で顎骨壊死を生じた 1.8%の患者さんには、個々の事情が存在したはずです。そこへ突然がんの宣告を受けた場合は、当然がんの治療が最優先され、それ以外の体の問題は後回しになってしまうのが実情でしょう。中には永く歯の問題を抱えながらも、抜かねばならない歯を放置していた患者さんがいるかもしれません。そのような患者さんの中から顎骨壊死が生じた可能性もあります。
がんの治療前に口の中を点検し、急な抜歯を要する歯がないことを確認している場合は、顎骨壊死につながることはほとんどないと推察します。がん治療の前後に口の中の状態を歯科で確認してもらいましょう。このような口腔ケアを 周術期口腔機能管理 といい、がん治療では必要なものとされています。体調の変化によっては周術期口腔機能管理を受けることが難しい時期もあるでしょうが、体調に問題がない場合はケアを受けることをお勧めします。今後、顎骨壊死が生じることは考えにくい状況ですが、万一顎骨壊死が生じても軽症であれば大きな問題とはならず、重症であっても治療法はあります。
歯根嚢胞について、歯ぐきのニキビ様のものを「サイナス・トラクト」もしくは「フィステル」といいます。これは歯根嚢胞の部分から生じた膿が歯肉を破って流れ出している状態です。最初の質問に自覚症状がないと書かれていたため、抜歯の必要無しと考えましたが、サイナス・トラクトが生じている場合は早めに抜歯した方が安全でしょう。
質問3 2022年6月24日
こんにちは。お忙しいところ再度の質問にお時間割いて頂き恐縮です。とても丁寧なお返事を頂き、感謝の気持ちでいっぱいです。発症率の有意水準についての考え方、大変勉強になりました。また顎骨壊死発症した方には様々な背景因子があるということも理解致しました。必要なケアを行えば、過度に恐れるものではないと分かり、お蔭様で心が軽くなりました。ご多忙の折、大変申し訳ないのですが、最後に1点だけ質問をお許し下さい。
現在無症状という歯について、正確な情報をお伝えしておらず失礼しました。過去にサイナス・トラクトを起こしているということで、「早めに抜歯した方が安全だろう」とのこと。根幹治療ではなく最初から抜歯という選択をする理由というのは、以下のような考え方で合っていますか?
・根幹治療がうまくいかなかった場合、炎症を繰り返す可能性がある
・炎症が顎骨壊死を引き起こすリスク因子なので、その可能性を現時点で排除した方が安全
・根幹治療を繰り返しても成功しなければ、将来的に侵襲的歯科治療が必要になり、その際は「ランマークの投与期間」がリスク因子となってくるので投与回数の少ない現時点で予防的抜歯がより安全
・今後骨髄抑制を伴う治療も予定していることから炎症リスクは高くなると思われる
回答3
歯のことだけを考えての回答であれば、根管治療でも抜歯でも顎骨壊死を起こさないように治療を進めることは十分可能であると推察します。最も懸念されることは、がんの治療期間中に歯の治療ができないほどに体力が低下したり、口腔粘膜炎が生じたりすることです。歯の治療ができないことが予想される場合は、抜歯を優先した方がよいでしょう。
謝辞
抜歯という選択についての考え方、よく理解できました。この度はお忙しいところ、一つ一つの質問に丁寧にお答え下さり、母娘ともども感謝の気持ちでいっぱいです。おかげさまで頭が整理され、すっきり致しました。教えて頂いた知見を元に、納得のいく選択をし、治療に臨みたいと思います。関東在住の為、樋口先生に診て頂くことができず残念です。遠くから先生のご健康と益々のご活躍をお祈り申し上げます。この度は本当に有難うございました。
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性別 |
相談日 |
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70代
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女性
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2022年5月17日
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質問1
口腔セネストパチーで苦しんでいます。下前歯の辺りからドロドロの唾液がわき上がり口蓋に引っ付きます。そこに舌があたり一日不快でたまりません。悪化の一途をたどり食事はまずく、また寝ていても舌がズリズリして目を醒ますなどとても苦しいです。
東京の心療歯科に通いテトラミド、トリプタノール、エビリファイリフレックスなどを試しましたが全く反応がありません。なんとか少しでも楽になる方法はないものでしょうか?
【回答1】口腔外科総合研究所 樋口均也
唾液や舌に何らかの異常がある場合は改善する方法が見つかるはずですが、診察や検査を受けても異常が見当たらず、口腔セネストパチーという診断が下ったと推察します。万一唾液の検査などを行っていない場合は、一度検査されることをお勧めします。
口腔セネストパチーは、客観的な異常が見られないにもかかわらず口の中に異常な感覚をおぼえる病気です。心療歯科で処方された抗うつ薬や抗精神病薬は、口腔セネストパチーの症状を改善する可能性はありますが、難治性の病気であるため効果を発揮しない場合も少なくありません。
このような場合は、漢方薬を試してみることも一案です。針治療も効果があるかもしれません。日中の苦しさや夜間の中途覚醒に対しては、認知行動療法が有効です。何より、この病気に意識が集中しないようにすることが第一でしょう。
謝辞
ご丁寧にありがとうございます。唾液の検査は何度も受けました。早速認知行動療法をしらべてみます。
| 年齢 |
性別 |
相談日 |
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30代
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女性
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2022年4月5日
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質問1
口内で気になることがあり、質問させてください。上顎、硬口蓋のすぐ後ろの軟口蓋に茶色い穴のような深めの凹みがあることに、矯正の相談で頂いた写真で気付きました。大きさは0.5ミリあるかないかくらいです。舌で触ると周囲が乾いてるような感じで凹凸がわかる感じです。
凹みの影でそう見えているのか、怖いものなのか不安になってしまいました。周りに染み出しているとかはなく、茶色いのは凹んでいる部分だけです。痛みはないですが、上顎全体が荒れ気味でヒリヒリしています。
これはどんな物の可能性がありますか?放っておいてなおるのか、そのままで良いのか、早急に口腔外科を受診した方が良いのかも教えて頂けますでしょうか。よろしくお願いします。
【回答1】口腔外科総合研究所 樋口均也
硬口蓋のすぐ後ろの軟口蓋の茶色い穴ということから、口蓋小窩の可能性が考えられます。口蓋小窩は口蓋の真ん中(正中)付近に左右一対ある小さな穴で、正常なものです。心配されている凹みが口蓋小窩であれば心配する必要はありません。ただし、口蓋小窩以外の部位に 凹みである場合は何らかの異常が疑われるため、口腔外科や歯科、耳鼻咽喉科の診察を受ける必要がありそうです。
この凹みの他、上顎全体がヒリヒリしていることは問題です。口腔灼熱症候群、口腔カンジダ症、カタル性口内炎など、いくつかの可能性が考えられるため、口腔外科等を受診されることをお勧めします。
謝辞
お返事ありがとうございます。大きさは違うのですが、確かに正中の周りに左右に一つずつ穴がありました。普段見ない所なので、写真を渡された時に動揺してしまいましたが、正常な物なのですね。とても安心しました!
上顎のヒリヒリなのですが、天ぷらを沢山食べた時に火傷&傷が出来てしまったのではとないかと思っています。たまに傷つけてかヒリヒリすることがあってのですが、病気の可能性もあるのですね。もう少し様子を見て、治らないようなら病院で診てもらおうと思います。大変分かり易く、丁寧なお返事ありがとうございました!
| 年齢 |
性別 |
相談日 |
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40代
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女性
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2022年3月26日
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質問1
68歳の親の症状でご相談です。三年前より口腔外科に通院しており、ドライマウスでサラジェンを処方されています。また、呂律が悪く、日によって喋りにくいことがあり、舌の位置を矯正する為、夜だけ装着するマウスピースを作りました。いずれも症状に改善は見られないのですが、二年前ぐらいから、口の中に違和感があると訴えています。
最初の頃は、歯に食べ物全てが挟まるから一口ごとにうがいをしなければ何も食べられないといった訴えから始まり、歯が全てすきっ歯になってしまった、噛み合わせが逆になってしまった、口の中に金属が入ってきてものすごい力で押さえつけられている、口の中にトラックが入り込んできた、歯が変で口の中の違和感が辛い、といった内容になってきました。実際に歯並びを見ても、昔から何も変化はなく、何もおかしくなっていないよと教えても違和感の訴えは続いています。
ネットで調べていたら、口腔セネストパチーという病気を見つけ、正にこのことではと思っています。この場合、ドライマウスや呂律が回りにくい症状も、前兆だったのでしょうか。
【回答1】口腔外科総合研究所 樋口均也
口腔セネストパチーが生じていると推察します。口の中の感覚は、主として感覚をつかさどる三叉神経によって脳に伝えられます。また、口の動きは顔面神経などの運動神経を通して脳がその動きをコントロールしています。
このように、口が乾く感覚や口の動きには全て脳が関与しています。客観的には口の乾きが確認できず、口の動きが悪く見えなかったとしても、本人にとっては口が乾き、呂律がまわらない深刻な状態で、原因は脳の働きの異常であると考えられます。
口の中に奇妙な感覚を持つ病気を口腔セネストパチーといいます。この病気の原因は不明ですが、統合失調症やレビー小体型認知症の症状として現れることもあります。
口腔セネストパチーに対する画期的な治療法はありませんが、向精神薬や漢方薬の服用、認知行動療法により症状が和らぐ場合もあります。
質問2
本日回答頂いた者です。ご丁寧なご説明、ありがとうございました。本人の訴えを聞いていると歯や口のフィジカル的な問題と思えるものの、脳や神経のコントロールが影響しているであろうことが分かり納得しましたし、少し安心しました。
呂律が悪いと感じた時に脳神経内科で検査をし、大脳皮質の難病の気配がある可能性が考えられると、言われたことがありました。三叉神経というのは、大脳皮質と関連するものでしょうか。
本人はあくまで歯や口そのものがおかしくなってしまっている(時には口の中の痛みの訴えもあり)との認識なので、家族としては一体どこに原因があるのか、少しでも知ることができて症状の理解をしてあげることができればという思いです。
【回答2】口腔外科総合研究所 樋口均也
三叉神経は第5脳神経であり、脳と直接つながっています。脳は延髄や小脳など生存に直接関係する脳幹や、大脳皮質という高度な思考をつかさどる部分など、異なる機能を持つ部分に分かれています。三叉神経を伝わる感覚の信号は脳幹を通り、最終的には大脳皮質に到達して「この感覚は正常ではない」「口の中に何か問題が生じているに違いない」といった思考が生まれることになります。
謝辞
大変分かりやすいご説明をありがとうございました。なかなか症状を理解してあげるのが難しい状況だったのですが、説明を聞いて、脳を通してどのような感覚として本人が感じるものなのか、なんとなく仕組みを理解することができたように思います。大変参考になりました。このように、確信が持てない疑問の問い合わせ窓口があって大変助かりました。ありがとうございました。
| 年齢 |
性別 |
相談日 |
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40代
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男性
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2022年1月25日
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質問1
コロナ療養中1週間です。口の中に違和感がありみてみると、舌右側舌より下側の方にできものができてます。透明で真ん中に穴っぽくなってるのがみえます。これは唾液腺がつまっているようなもんでしょうか?
まえに唇にできたことがあります。ヘルペス持ちですが痛くもありません。自然につぶれるのをまつしかありませんか?病院にもいけないので不安です
【回答1】口腔外科総合研究所 樋口均也
舌側面の下方部分ということは口底部に相当すると思われます。痛みがないことと透明であることから唾液が溜まって生じた粘液のう胞が疑われますが、粘液のう胞の場合は真ん中に穴は空きません。以前唇にできたものも粘液のう胞の可能性が高そうなので、同様の症状であれば今回も粘液のう胞でしょう。
ただし他の腫瘍や口底がんではないと断言はできないため、口腔外科や歯科、耳鼻咽喉科で検査を受ける必要があります。コロナ禍の一時的な措置として、初診からオンライン診療を行っている医療機関を受診されることをお勧めします。
| 年齢 |
性別 |
相談日 |
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60代
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男性
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2022年1月11日
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質問1
昨年7月から歯の浮き感に悩まされております。一日中歯が浮いた感じがし、特に仕事などで難しい文章を解読するなどの時に気持ちを集中するとその感覚が強くなります。その時に特に歯を食いしばるようなことはありません。感覚が強い時は肩こりや頭痛と連動します。
これまでの経緯ですが、
・昨年3月から口の中の違和感(ドライマウス、ものを食べにくく舌や口の内側を噛んでしまう、など)がありました。かかりつけの歯科医(A先生)に診ていただき、自己マッサージの指導を受けドライマウスは解消しましたが、その後歯の浮きを感じるようになりました。
・A先生は、一般的に歯の浮き感は歯周病を疑うが、私の場合はドライマウスがそうであったように、口の中の雑菌などによる反応が過敏になっているのではないか、しばらく様子を見ましょう、との見解でした。
・余りにも歯の浮き感が強いので、以前のかかりつけ歯科(B先生)はどのように思われるかと診ていただいたところ、歯の浮き感は歯周病(軽度ではあるが)が原因と考えられるとの診断で、その後2か月(8,9月)通院し歯と歯茎の掃除と薬によって歯周病は改善されましたが、歯の浮き感は残りました。
・B先生からさらに専門的に歯周病の治療を行うC先生への紹介を受け、C先生の診断では軽度の歯周病であるので、現在、さらなる歯と歯茎の掃除を行っています。
・C先生によりましたら、歯周病がなくなっても歯の浮き感がなくならないようであれば、歯ブラシによる擦過創、噛み合わせをチェックするとのことです。
・その間、11月に友人の神経内科医(D先生)に相談する機会があり、漢方薬(抑肝散加皮半夏)を2週間飲んでみましたが変わりません。
以上がこれまでの経過です。
歯の浮き感の一番の要因とされる歯周病の治療はC先生にしっかり診ていただこうと思いますが、これまでの治療で歯周病は改善されているのに、歯の浮き感が全く変わらないので、他の要因があるのではと感じています。ここ一年ほどで、衰えによる体のさまざまな変化を感じるようになり、はじめのA先生がおっしゃるような過敏が生じているのでは、体内の制御系が不調を起こしているのでは、などと思っていますが、これは素人の漠然とした考えで根拠はありません。
今の歯周病あるいは噛み合わせなどの治療は第一であると思っていますが、一方で他の要因もあるのではと思いますが、相談するあてもなくネットで調べるうちに、先生のサイトに行きつき、ご相談を差し上げる次第です。何かご見解をいただければと思います。私の説明に不足することがありましたら、お教えください。
【回答1】口腔外科総合研究所 樋口均也
通常、上下の歯が噛み合っている限り「歯が浮く」という現象は起こりえないことなので、恐らく浮いたような感覚に陥っているのでしょう。歯は歯根膜(歯周靭帯の一種)を介して歯槽骨とつながり、噛む圧力が歯に加わると歯が沈下し、歯周靭帯が引き伸ばされます。この「引き伸ばされた」または「再収縮した」感覚が、「歯が浮いたような感覚」として知覚されていると推察します。
このような異常は感覚過敏か感覚鈍麻のいずれかに該当し、脳内で触覚(圧感覚)を伝える神経回路に余分な配線が加わっている、あるいは断線している可能性があります。
確定した治療法はありませんが、抗うつ薬や抗けいれん薬、抗精神病薬などの内服の他、系統的脱感作法で神経の状態を調整する方法があります。
質問2
神経レベルでの不具合で感覚が病的に生じている可能性があること、そしてそれに対しては、メンタル的な内服や療法による状態の調整が考えられるとのこと、歯科・口腔外科の先生からそのようなご見解をいただき、ありがたく思います。
抗うつ薬、抗精神病薬についてのお話がありましたが、私は仕事上のストレスを軽減するために10年ほど心療内科にかかり、薬を処方されておりました。数年前に仕事の環境が変わったことからストレスを感じなくなり、主治医の指示に従って徐々に薬の量を減らして、昨年2月に薬を飲むことを終えました。その後、3月から先のメールで申し上げた、口の中の異常を感じるようになり、今思えば、10年間飲み続けた薬を飲まなくなったことと、それ以降に生じた口の中の異常にもしかしたら因果関係があるのではと思いました。なお、現在メンタル的には全く問題なく、公私ともに安定した生活を送れています。
いただいたコメントの検討をもう少し進めてみたいと思うのですが、どのようにすればよいかご助言をいただければと思います。例えば、樋口先生に診ていただく、あるいは、心療内科を受診する、あるいは、他の適当な病院の心当たりがあればお教えいただく、などです。ちなみに、心療内科についてはこれまでに掛かった何人かの先生を知っていますが、今回のような病状にご対応いただけるものなのかは不明です。
【回答2】口腔外科総合研究所 樋口均也
前回の回答は、ご質問の文面から推測できる範囲でお答えしたもので、今後の治療の見通しを示すものではありません。従って、他の医療機関を紹介できるような状況ではなく、まずは診察や検査を行ったうえで現状を正確に把握する必要があります。その結果を踏まえ、試行錯誤しながら治療を進めていくことになるでしょう。
| 年齢 |
性別 |
相談日 |
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50代
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女性
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2022年1月6日
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質問1
抜歯後の疼痛について教えて頂きたくメールを致しました。2年前に右下7番を抜歯しましたがずっと疼痛があります。6番を10年前に抜歯した為5番と7番でブリッジをしていましたが、7番が数年前から調子悪く腫れや膿、痛みの繰り返しで根元も割れていたために抜歯をしました。
抜歯後2ヶ月間痛みと腫れと膿が出ていましたので再度レントゲンを撮ったところ欠片が残っていたので再ソウハしました。その後腫れと膿はなくなり傷跡も骨も異常は無いのですが痛みだけ残っています。
主治医の先生いわく、長年の痛みを覚えてしまい抜歯痕の異常はないが痛みだけ消えない状態と言われ、どうする事も出来ないと言われました。地元の口腔外科にも行きレントゲンを撮りましたが異常がなく同じ事を言われました。
激痛では無いのですがこのどんよりした痛みと後何十年も付き合っていくのは辛いです。何か痛みをとる方法はないでしょうか?あと、このような痛みはやはり長年の痛みを記憶してしまった為でしょうか?長文で申し訳ありません。お時間ある時で構いませんのでご教授のほど宜しくお願い致します。
【回答1】口腔外科総合研究所 樋口均也
痛みの原因となった歯についての問題が解決したにもかかわらず、痛みだけが残っている状態なのですね。「病覚変調性疼痛」の可能性があります。複数の先生が診断された通り、痛みの持続によって脳が痛みを覚えてしまった(中枢感作)結果、治らなくなった状態であると推察します。
このような痛みに対しては抗うつ薬などの薬物療法が有効で、認知行動療法などの心理療法と組み合わせることにより、さらなる改善が期待できます。
質問2
お世話になります。お忙しい中、早々のお返事ありがとうございます。痛みが残る事が理解に苦しんでおりましたが、今回大変分かりやすく説明して下さり、納得が出来ました。思い切ってメールをして良かったです!本当にありがとうございました。
最後にもう一度だけ質問してよろしいでしょうか?このような場合の抗うつ薬を貰うには、心療内科を受診すればよろしいでしょうか?それとも別の専門の科でしょうか?教えていただければ幸いです。
【回答2】口腔外科総合研究所 樋口均也
通常、慢性的な痛みに対しては抗うつ薬を処方しますが、残念ながら歯科や口腔外科で抗うつ薬を処方する医療機関は少数です。従って、ペインクリニックや心療内科の方が適しているといえそうです。
ただし、ペインクリニックや心療内科にとって口腔は専門領域外であるため、治療を断られる可能性があります。通院中の歯科や口腔外科からの紹介状を持参し、ペインクリニックや心療内科、もしくは内科、精神科を受診されることをお勧めします。
謝辞 2022年1月9日
お世話になります。度々の質問に丁寧にご回答下さりありがとうございます。樋口先生から詳しくご説明を受け少し気分が落ち着いております。
かかっている歯科医院に紹介状の件は頼んでみます!今回は本当にありがとうございました。心から感謝致します。
| 年齢 |
性別 |
相談日 |
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50代
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女性
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2021年12月18日
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質問1
1年半くらい前から、口の中の不快感に悩まされています。朝から寝るまで上顎がネバネバ、ベタべタして舌と上顎が吸い付きます。変な味もします。常に唾液が上顎にドロドロ溜まります。耳鼻科では亜鉛や漢方をもらいましたが全く改善されず、歯科ではドライマウス?かなくらいと言われました。
毎日毎日本当にストレスです。精神的に限界を超えています。本当につらいです。ネットでも色々調べて、自分では口腔内保湿感症、口腔心身症かとは思います。
1日たりとも何も感じない日がありません。日常生活にも支障をきたし、仕事中もつらいです。食事もとりあえず食べている感じです。食事が全く楽しめません。大学病院も考えましたがどこに行けば見てくれるかわかりません。治療となると金銭面も不安です。どうしたら、いいか分かりません。
【回答1】口腔外科総合研究所 樋口均也
口の中が常に不快な状態であるという点から、ご自身で口腔異常感症や口腔心身症を疑われていますが正しい判断であると推察します。このような状態を口腔セネストパチーともいいます。
まずは医療機関で検査を受け、不快な状態の原因が実際に存在するのかどうかを調べましょう。唾液の出具合が悪かったり、口腔粘膜が乾燥している場合はドライマウスに対する治療により症状の改善が期待できます。味覚検査で異常があれば、味覚異常に対する治療により変な味は改善するでしょう。
どのような異常も見当たらない場合は感覚の異常、つまり脳の機能異常と考えられ、抗うつ薬などの薬物療法が効果的です。
日常生活の支障については認知行動療法などの心理療法が有効で、症状そのものが改善する見込みもあります。
質問2
こんばんは。口腔セネストパチーはやはり自然治癒は不可能なようですね。毎日本当に症状が辛く、精神的にまいっています。今後どのようにしていけば症状は軽減されますか?やはり病院に通わなければなりませんか?回答よろしくお願いします。
【回答2】口腔外科総合研究所 樋口均也
精神的な困難については、カウンセラーによる心理療法を受けることも一案です。
| 年齢 |
性別 |
相談日 |
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30代
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男性
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2021年11月25日
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質問1
舌苔治療を考えています。口腔外科ならどこでも治療していただけるものですか?例えば口腔外科のある歯科医院、クリニックでも治療してもらえるでしょうか?医院によっては対応できる症状、できない症状があるものですか?
【回答1】口腔外科総合研究所 樋口均也
口腔外科であれば舌苔の診察はしますが、残念ながら舌苔の治療を受けることは難しいでしょう。舌苔を治療する口腔外科や歯科医院は皆無に等しいといえますが、ご希望であれば地道に医療機関を探す以外に方法はないでしょう。
謝辞
分かりました。親切にわかりやすいお答え本当にありがとうございました。これからもこの知識を活用させていただきます。
| 年齢 |
性別 |
相談日 |
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30代
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女性
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2021年11月11日
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質問1
3週間くらい治らない痛くない赤い口内炎のようなものがあり、心配性なので口腔外科で切除してもらいました。病理検査の結果、中度異形成とのことでした。病理検査結果は下記のように書かれていました。
組織学的には領域性を有する異形上皮で、過錯角化に加え、基底層の過形成、核/細胞質比の増加、細胞の多形成や核の過染性がみられます。内部の異形度は採取された範囲においても不均一です。Moderate dysplasia相当と考えます。上皮下にはほとんど炎症性細胞浸潤を認めません。
お聞きしたいのは
1私の中度異形成というのは前がん病変なのか
2今後最低2年、3~4ヶ月おきの経過観察をすることになったが、間隔は妥当か
3わたしはがんになってしまうのか、確率はどのくらいなのか
4ネットで検索しても白板症などの情報しか出てこず、異形成というのは珍しいのか
かなり心配性で、小さい子供がいて、子供達の顔を見ていると涙が出てきます。どうかご回答お願いします。
【回答1】口腔外科総合研究所 樋口均也
病理組織検査の結果というものは専門用語が羅列され、専門家以外には理解できない内容ですね。口腔粘膜が白くなったり、赤くなったりする口腔白板症の病理所見では「異形成」「過形成」と表現されるのが一般的です。つまり、異形成=口腔白板症のことです。
口腔白板症はがん化する場合があるため、以前は「前がん病変 」のひとつとされてきました。口腔白板症の約1割がガン化する、というメタ分析の研究結果が今年(2021年)報告されました。メタ分析とは多数の論文の結果を集計したもので、今回は37の論文が対象でした。口腔白板症において異形成がある場合はない場合に比べてガン化しやすく、おそらく2割前後がガン化すると予想されます。
一般的な経過観察の期間は半年に1度、あるいは年に1度です。従って、3~4カ月に一度の経過観察はかなり手厚い対応といえるでしょう。
RODRİGUEZ-ARCHİLLA, Alberto, and Cristina FUENTES-PEREZ. "Clinicopathological parameters related to malignant transformation of oral leukoplakia: a meta-analysis." Cumhuriyet Dental Journal 24.2.
dergipark.org.tr/en/download/article-file/1488578
質問2
ご返信ありがとうございます。主治医の先生からは、今回取り切れているし、今後癌が発生するような確率は他の何もない人と変わらないレベルだと思ってもらって大丈夫といわれました。それは誤りということでしょうか?
【回答2】口腔外科総合研究所 樋口均也
前回紹介したがん化の割合は異形成を伴う白板症全体を集計した結果です。この中には病変の一部を標本として採取し、病変が残っているものや、切除ではなく凍結外科療法やレーザー照射したものも混じっています。
したがって、病変を全切除した場合のがん化率は2割よりももっと小さくなります。しかし、何もない人よりはガン化の可能性が高いことも間違いありません。
質問3
なるほどです。納得しました。全部取り切れているかの確認は、具体的にはどのように行うべきなのでしょうか…サファイアプラス?というものをネットで見ましたが、それは有効ですか?
【回答3】口腔外科総合研究所 樋口均也
全部取り切れているかどうかは摘出した病変の連続切片を作製して観察することで確認できます。摘出した境界部位に異形成部分があれば、摘出した範囲の外側の部分にも異形成病変が残っていることになります。病変組織標本を調べる以外に、口腔粘膜に蛍光を当てて調べるサファイアプラスなどの機器やヨードグリセリン液を塗布するヨード染色法などがあります。
質問4
それは断端確認というものですよね?病理検査の結果用紙には特に何も書かれておらず…
病理検査の際は断端確認というのは必ず行うものなのでしょうか?
すみません、最後に1つだけ教えてください…今回わたしの病変は赤く(唇の粘膜の色と同じくらい)ほんの少し凹んでいました。まさに赤い口内炎という感じでした。切除する前の写真を見返したら唇の粘膜よりは赤い感じでした。光の加減で円形に赤い口内炎のように見えますが、実際は縦1〜2mm、横3〜4mmと楕円?形でした。色が赤いけども、病名をつけるなら白板症ということで良いのでしょうか。
【回答4】口腔外科総合研究所 樋口均也
がんの場合には断端確認を行いますが、今回のように良性病変では行わないと思います。ただし担当の先生が病理組織標本を自身で観察して、その結果「取り切れている」と説明されているのかもしれません。
「異形成」という病理組織所見ではどのような病気かわかりづらいため、以前のメールで「白板症」お答えしました。白板症は口腔粘膜が白くなる病気ですが、赤い部分が混じることもあるため、このような状態をイメージしてお答えしました。
正確にいうと「異形成」となる口腔粘膜病変には「白板症」「紅板症」「紅板白板症」の3種類があります。赤いだけで白くない病変だということですので「紅板症」の可能性が高いと思います。
質問5 口腔外科総合研究所 樋口均也
度々すみません。。改めて主治医に不安な点を確認したところ
● 取り切れているのは目視確認での判断
● より詳しくとなると染色で確認方法があるか、今回そこまでするものではない
● 紅板症で唇となるとかなり稀のようにネットで書いてるが、そんなことはないし、30代でもいる
● 大きなくくりでいうと紅板症
● 中等度の異形成なので癌化率は1割前後
と言われました。しかしネットでは紅板症となるとかなりの確率で癌化するし大変な疾患のように書かれています。素人のくせに恐縮ですが、ネット(いろんな病院のHP等)に書いてあることと乖離があり困惑しています。何度も申し訳ないのですが、
●取り切れているかの詳細な調査は本当にしなくて大丈夫なのか
● 異形成のレベルに関係なく、赤い病変というだけで紅板症(癌化率高)という診断になるのか
●ほとんどの症例に刺激痛有りという表記も見ましたが私は全く痛みはなかったです
●紅板症はネットで見るように、かなり稀な疾患なのか
● 主治医のいう今後の癌化する確率1割前後はそのとおりなのか
教えていただけると幸いです。
【回答5】口腔外科総合研究所 樋口均也
「取り切れているかの詳細な調査は本当にしなくて大丈夫なのか 」というご質問ですが、病変があるかどうかは目視で十分観察できます。
「 異形成のレベルに関係なく、赤い病変というだけで紅板症(癌化率高)という診断になるのか 」というご質問ですが、赤い病変というだけでは紅板症という診断にはなりません。紅斑症と診断するかどうかは担当の先生に確認してください。
「紅板症はネットで見るように、かなり稀な疾患なのか」「主治医のいう今後の癌化する確率1割前後はそのとおりなのか」というご質問ですが、紅板症は白板症と比べると稀な疾患です。紅板症が悪性化しやすいといわれるのは、異形成が強いものが多いからです。異形成の程度が弱ければ紅板症であったとしても悪性化の心配はほとんどないといえます。中等度の異形成という状態を考えて1割前後という数値が導き出されたのだと思います。
【謝辞】
詳しくありがとうございます。腑に落ちました!!口腔外科があまりなく、有名なクリニックですとセカンドオピニオンに3〜4万円かかると言われていた中で、とてもとても参考になるご回答を本当にありがとうございました。
不用意に不安にならずに、経過観察をしっかり行い、できる限りの口腔ケアを行なっていきたいと思います。本当に本当にありがとうございました。